「米国株100%、日本株は不要」という人の落とし穴 日本株には実は「これから期待できる点」がある

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筆者は、株価についてコメントする論者の中で、現在、相対的には日本株に対して好意的なほうに属すると自認している。

一方、長期投資的な観点から、「日本株への投資は、もういらないのではないか」と言う個人投資家が実は増えている。その主な理由は①予想される日本経済の成長率の低さや、日本企業の企業統治の改善がなかなか進展しない②アメリカをはじめとする海外企業の株式時価総額の拡大に対して日本企業の時価総額が見劣りするようになり、そのことから生じた世界の株式市場の中における「日本株」の地位が低下している、といったことだ。

日本株には「そこそこ投資してもいい」

筆者は、それでも、日本の居住者は「日本株に、そこそこには投資していいのではないか」と思うのだが、理由が2つある。

1つ目は、われわれ日本の個人投資家が将来に必要とする支出は円建てなので、リスクとリターンのバランスを考えたときに、日本に居住する人にとっては、円建ての株式リスクをある程度持つことが合理的になりうるということだ。外国株式への投資は、為替リスクがある分不利になりやすい。この点を考えると、投資を「外国株のみ」に割り切ろうとするのは、力みすぎだ。

もっとも、日本円の為替リスクは、世界の金融政策の方向性が一意していることもあって、近年、かつてほど大きくはない。

2つ目は「株主本位の経営」(典型的には自社株買い)をすでにやりすぎに近いくらい行っているアメリカ企業よりも、日本企業のほうが株主本位の経営による株価上昇のポテンシャルを残しているのではないかという、やや長期的な推測がある。

この推測は、正しいかも知れないし、正しくないかも知れない。今後、日本企業のガバナンスがアメリカ企業的なものに移行するのなら、ビジネスが同じでも「ガバナンスが改善するだけで」追加的なリターンを生むことができる。合理的だとは思うのだが、筆者の個人的な(逆張り趣味的な)「賭け」が少々だが含まれている。

ダメだ、ダメだ、と言われる日本株で儲けるのは、なかなか気分がいいではないか。

もっとも、個人投資家が気にするリスク・リターンのスケールから考えると、リスクを取る運用部分について、例えば①国内株式50%+外国株式50%②国内株式40%+外国株式60%③日本株を含む世界株式100%④日本株を含まない世界株式100%、のそれぞれどれがいいのかは、現在判然としない。

それぞれはお互いに、「近い」いっぽうで「差はある」のだが、その「差」が小さくなっていて、かつ今後どのように動くのかが判然としない。

そうなのだとすると、個人投資家にとっては③で割り切るのが最も簡単で現実的かも知れない。資産運用をシンプルにしたいと思う投資家には、「全世界株式」を対象とするインデックスファンド(海外ETFを含む)を検討してみることをお勧めする。「ワクチンラグ」のような現象を気にしないで済むので、精神衛生にもいい(本文はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

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