「米国株100%、日本株は不要」という人の落とし穴 日本株には実は「これから期待できる点」がある

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主要先進国とわが国の間には、ワクチン接種の進行スピードに半年〜1年の時間差(ラグ)があることは認めざるをえない。政府批判は本稿の目的ではないが、日本政府のワクチン確保行動の拙さが響いた。政治家と官僚を総合した、日本の政府の相対的な力が先進各国に劣ることがここに表れている。

投資家は今後「ワクチンラグ」に期待してもいい

ただし、株式の投資家は、悲観するには及ばない。

「ワクチンラグ」が単純な「ラグ」であるとするなら、日本株の投資家は、今後のワクチン接種の進行に伴う日本経済の回復が株価に織り込まれる過程を楽しみにしていていいという理屈になる。「下方修正」が「上方修正」に転換するときの効果は大きい。

経済学の議論でよくあるように、「他の条件を一定とすれば」この期待には、そう大きな無理はない。 実は、わが国の昨年の税収が60兆円を超えたことからも推測できるように、「企業全般」の収益は、すでに昨年からアメリカ・中国をはじめとする海外の経済伸長を背景に悪くない状況を迎えている。日銀短観で言うところの「大企業製造業」は好況に振れている(儲かっている人は「私は儲かっている」と大きな声ではなかなか言わないが)。

コロナで厳しいのは、飲食・旅行観光・小売り・エンターテインメントなどの対人接触型の内需産業だ。もちろん、ワクチン接種が進んで、これらの業種の収益が底上げされると、それが他の産業にもプラスに波及するから、今後プラスに表れる「ワクチンラグ」には期待していいはずだ(そうならなければ、それは、さらなる「失政」だろう)。

他方、アメリカでは今年に入ってからインフレに対する懸念についてFRB(米連邦準備制度理事会)の議論が話題になるように、「景気過熱→インフレ→金融緩和の縮小・終了」に対する心配が、株式市場にとって最大の懸念材料になっている。この場合、日本株も下落に巻き込まれることになるだろう。

ワクチン接種が進んで、やっと日本経済が広く回復する過程に向かうときに、アメリカの株価が大崩れするといった展開がありえなくもない。

ちなみに、ワクチン接種進展に伴う経済回復後の第2の心配は、日本の政府が性急な「財政再建」に舵を切ることだ。不人気な現在の船長(=菅義偉首相)が交代する可能性が出てきたが、次の船長には財政再建派が就くリスクがある。こちらの可能性は、株価だけでなく、日本経済全体への大きなリスクシナリオだ。

心配ばかりしても仕方がないのだが、「可能性」は頭に入れておくほうが、将来の事態に対処しやすい。

次ページ日本株の長期的なプラス材料・マイナス材料とは?
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