認知症の親が増え跋扈する「成年後見ビジネス」 家族を向こうに弁護士や司法書士たちが群がる

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民法858条では後見人について、認知症の人などの「意志を尊重し、心身の状態および生活の状況を配慮しなければならない」と、身上配慮業務を定めている。しかし、数をこなすだけで、本人と会わない、会っても話をしない後見人も少なくない。ある意味で”効率のいい”ビジネスだが、それで本当に法の理念は実現できているのか。

「後見人を付けたら、私たち家族が父に面会できなかった」

そう訴えたのが、6月28日に厚生労働省で記者会見を開いた、「後見制度と家族の会」だ。全国26都道府県から104人が賛同して発足した。目指しているのは、後見人には原則として家族や親族がつくこと、本人の意志や意向を尊重すること、などだ。現場の調査や情報発信のほか、家裁、自治体、弁護士などの業界団体にも働きかけていく方針である。

同会の石井靖子代表自身も、高齢の父についた弁護士の職業後見人と、折り合いがつかなかったという。「成年後見制度の運用などについて、本人や家族の立場に立って具体的に提言する」(石井代表)。今後はセミナーや相談会の開催、相談員の育成などの活動をしていくという。

国内で認知症の患者は600万人以上

ちなみに現在、国内に認知症の患者は約600万人以上いるとされ、65歳以上の6人に1人が該当する計算だ。ほかに知的・精神障害者は併せて520万人いる。ともに介護や福祉、医療と絡み、これからの日本社会には切り離せない大きな問題だ。

結局、成年後見とは誰のため、何のための制度なのか。国家資格もいらず、明確な業法がないこともあり、この制度に群がる職業人や組織は多い。近年では家族信託という別な仕組みも拡大しつつある。今や士業だけでなく、社会福祉協議会や信託銀行、さらにはNPO(非営利団体)まで、高齢者の潤沢な資産をターゲットに、百花繚乱の状態といえよう。

いずれにしても、ビジネス化しつつある実態に、本人や家族が振り回されている。今こそ成年後見制度の主旨に立ち返って、本人の財産を守り活動を支えるにはどうしたらよいか、見直すことが必要ではないか。
      

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。資産運用や相続、年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。大野和幸(X)

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