認知症の親が増え跋扈する「成年後見ビジネス」

家族を向こうに弁護士や司法書士たちが群がる

問題なのは、任意後見も法定後見も、どうしても本人の意思が反映されにくいことだ。それを利用した成年後見人による不正件数は、直近でピーク時の年800件台より減ったとはいえ、現在も年200件前後ある。

そして最大の問題は、「親族以外の後見人」が増えている点だ。

開始時こそ、日本らしい家族中心主義の伝統にのっとって、後見人には親族が選任されていた。ところが、「いずれ自分が使うお金だから」と、親族による財産の横領が頻発。監督責任が問われるのを恐れた最高裁判所は、以降、親族を後見人から外し、司法書士や弁護士などの法律専門職を選任する方向に舵を切ったのである。

とりわけ、本人の金融資産が一定額以上あると、家裁はプロフェッショナルの職業後見人を選ぶことが多い。かつて後見人の9割は親族だったが、今や「職業後見人」が約7割を占め、「親族後見人」は3割を切っている。職業後見人の上位は司法書士や弁護士。親族中心の欧米とは対照的だ。

「家裁や法律専門家、自治体の圧倒的な力を前に、ほとんどの親族が後見人となれず、泣き寝入りしている」と指摘するのは、成年後見制度の問題に取り組む団体「後見の杜」の宮内康二代表である。

本人と会ってない、会っても話をしない?

後見人の仕事は、限りなく福祉に近い内容で、片手間にできるものではない。行司役となる家裁にしても、人員は限られており、個々の案件を詳しく見られるわけではない。その結果が法律専門職に“丸投げ“。業際問題でしのぎを削り合い、業務範囲を拡大したい弁護士や司法書士、社会福祉士、行政書士などの士業が食いついていった、というのが実態だろう。

実害を受けているのが、認知症の高齢者本人や家族である。財産を管理する職業後見人の許可がなければ、銀行から本人の預金を解約したり、消費したりすることができないからだ。

むろん親族後見人と異なり、職業後見人には報酬が発生する。基本報酬は年24万円(本人の金融資産が1000万円以下の場合)、年36万~48万円(同1000万~5000万円以下の場合)、年60万~72万円(同5000万円以上)。とはいえ、やることといえば、本人の通帳を預かること、家裁に報告書を年1回提出することなど、あまり多くない。このほかに、収益不動産の複雑な管理なども行えば、付加報酬も発生する。

家裁には後見人を解任する権限があるものの、よほどの理由がない限り解任することはない。いったん職業後見人をつけたら、認知症の高齢者は自分が死ぬまで、延々と報酬を払わされ続けるわけだ。

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