乳幼児が危険!感染過去最悪「RSウイルス」の正体 新型コロナだけじゃない「医療崩壊」のリスク

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加えて、第5波とされる今回の感染拡大の主流はインド型と呼ばれるデルタ株に置き換わりつつある。これまでよりも感染力が強いとされるだけでなく、子どもにも感染して重症化が懸念される。

「そうなると、子どものために新型コロナウイルスの病床も必要になってきます。そこではRSウイルスとデルタ株をまた分けなければならず、小児現場では『さあ、どうしよう』という状態です」(今川氏)

事実上の医療崩壊の引き金となりつつある。そこに慢性的な看護師の不足が重くのしかかる。小児病棟を成人の新型コロナウイルス感染症に開放したことにより、看護師もそちらにまわることになった。小児の重症患者が増えたからといって、戻すこともできない。そうなると、従来ならば救えた命も救えなくなることも起こりうる。

予防法は新型コロナウイルスと同じだが…

あらためて2つの感染症について考えてみる。RSウイルスも新型コロナウイルスも飛沫感染であって、予防法は、手洗い、マスク着用の励行で一緒のはずだ。なぜ、子どもたちにRSウイルスの感染が急拡大しているのだろうか。

ある医療関係者は「再生産数の違いではないでしょうか」と言う。つまり、新型コロナウイルスに比べて感染力が強いとみる。疫学の現場からは「新型コロナウイルスは飛沫感染、RSウイルスは接触感染が強いといわれています」との指摘もある。

しかし、ここへきての新型コロナウイルスの感染拡大をみれば、東京都感染症情報センターの指摘に合点がいく。

「昨年までは社会全体が感染対策を徹底していましたが、それが緩んだことが原因ではないでしょうか」

RSウイルスは昨今、大人への感染も認められている。免疫を持っているから発症することはないが、ウイルスを自宅に持ち帰るケースもある。家族が自宅でもマスクをして過ごすということは考えられない。それに乳幼児ともなれば、どうしても保護者が密着して世話をしなければならない機会が増えてくる。抱っこをしたりすれば、それだけ顔の位置も近くなる。

同じことは、保育所や幼稚園でもいえる。子どもにとってマスクはしづらいものだ。子ども同士で遊んでいて、鼻を出した「鼻マスク」になったり、密着した遊びが増えたりする。小さな子どもや乳幼児に「感染に気をつけなさい」と言っても無理なことであって、むしろ子どもの命を守らなければならないのは大人の責務だ。

東京オリンピックの開幕と同時に急増してきた新型コロナウイルスの新規感染者数。政府は、緊急事態宣言を新たに埼玉、千葉、神奈川と大阪に発出して、東京、沖縄の期限を延長することを決めた。

先行きが見えず、長期化するコロナ禍に疲労と困憊を禁じえないとしても、幼い子どもたちは外敵から自らの身を護る術を持たない。大人の身勝手な行動で、子どもの命を危険にさらすようなことがあってはならない。その自覚を持った大人の行動があらためて求められている。

青沼 陽一郎 作家・ジャーナリスト

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あおぬま よういちろう / Yoichiro Aonuma

1968年長野県生まれ。早稲田大学卒業。テレビ報道、番組制作の現場にかかわったのち、独立。犯罪事件、社会事象などをテーマにルポルタージュ作品を発表。著書に、『オウム裁判傍笑記』『池袋通り魔との往復書簡』『中国食品工場の秘密』『帰還せず――残留日本兵六〇年目の証言』(いずれも小学館文庫)、『食料植民地ニッポン』(小学館)、『フクシマ カタストロフ――原発汚染と除染の真実』(文藝春秋)などがある。

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