医師が証言「羽田空港関係者の感染が増加」の悲鳴 東京五輪に伴う人流増加の影響が懸念される

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この空港近くの総合病院で、空港関係者のコロナ患者が増え始めたのは、ちょうど海外からメディアや選手団、大会関係者らが羽田空港に既に本格的に到着していた時期と重なる。

菅首相は7月26日に発売された月刊誌『Hanada』のインタビューの中で、東京五輪開催によって新型コロナの感染が拡大するとの批判について、「ワクチン接種者数が極めて順調に増えているため、その懸念はあたらないと思う」と述べた。

これに対し、この医師は「時期的に東京五輪に伴う人流増加で、羽田空港関係者の感染が増えていると考えられます」と指摘する。

筆者が羽田空港のある大田区感染症対策課に電話取材したところ、1日当たりの新規感染者は7月1日時点では23人だったが、7月20日時点では3倍近くの68人に増えている。

なお、筆者は、羽田空港近くにある複数の他の病院にも電話取材を試みたが、電話が通じなかったり、電話が通じても患者の守秘義務を理由に断られたりした。

羽田空港の「バブル方式」はこんなにも緩い

そもそも政府や東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会は、新型コロナの感染拡大防止策である「バブル方式」の脆弱さも、多く指摘されてきた。

「バブル方式」は、海外からの選手や大会関係者を一般市民と接触させないというもの。菅首相も「選手、関係者は一般国民と交わらない」と強調してきた。

しかし、このバブルは選手団入国時の羽田空港で事実上、崩壊している。筆者は海外選手団の来日がピークを迎えていた16日、彼らが到着する羽田空港第3ターミナル国際線到着ロビーを取材している。

到着ロビーを訪れると、狭い場所で人がごった返していた。数え切れないほどの大勢の英国とアメリカの選手団が筆者の目の前をゆっくりと歩いて通り過ぎて行った。選手団はスタンション(仕切り棒)でつながれた青いベルト2本の間を進んでいった。それが選手団にとっての導線(通路)になっていた。

しかし、すぐその隣には、スーツケースを引いて歩く一般客の姿も多く見かけられた。筆者が想像していた「バブル方式」とは正直かなりかけ離れていた。ベルトを越えて違うレーンを歩いてはだめよ、といった単なる便宜上の区分程度の分け方だった。

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