「分かち合い」の経済学 神野直彦著 ~異端の思想が語る人間の未来

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 著者がそう主張するのは、小泉内閣の誕生前に公刊した著書(『「希望の島」への改革』)で、かつての大不況の際に「絶望の海に浮かぶ希望の島」と称されたスウェーデンを例に挙げ、21世紀の日本では競争を煽るよりも、人間の絆を重視する「協力社会」、すなわち「分かち合い」に向けた改革が必要だと唱えていたからだ。

その意味で100年に一度の危機に驚き、突然「懺悔」した経済学者とは異なり、著者の思想は一貫して「異端」だったのである。

「分かち合い」の社会では、富める人だけではなく貧しい人の負担も重い。税金を払えば無償の公共サービスで生活を営める。

企業による解雇も自由だが、有給で訓練を受ければ新しい職にも容易に就ける。負担と解雇の先に「約束の地」があるから、人々は増税にも解雇にも抵抗しないのだ。そんな社会をどうすれば実現できるのか。本書をひもとき、いまこそ人間の未来を考えてほしい。

じんの・なおひこ
地方財政審議会会長、東京大学名誉教授。専攻は財政学。1946年埼玉県生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。大阪市立大学助教授、東京大学助教授、東京大学教授、関西学院大学教授などを経る。

岩波新書 756円 202ページ

  

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