客の懐の中で進化を追う、「超純水」はサービス業だ《戦うNo.1技術》

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客の懐の中で進化を追う、「超純水」はサービス業だ《戦うNo.1技術》

水処理最大手、栗田工業の技術革新は、半導体メーカーとの二人三脚で進んできた。「半導体メーカーになったつもりで開発に当たっている」という依田元之取締役開発本部長の言葉が、それをそのまま物語っている。

半導体や液晶パネル製造に欠かせない超純水。超純水とは電解質(イオン類)のほか、水中に溶解・分散している有機物、生菌、微粒子、溶存ガスなどを極限まで取り除き、「理論純水」に近づけた水を指す。

客先の工場内に自社設備 機械屋から“水売り”へ

栗田は1970年代から半導体メーカー向けに超純水製造装置を提供、80年代以降の半導体市場拡大とともに、同社の成長を担ってきた。現在、国内電子産業向け超純水製造装置で約7割のシェアを握る。

もっとも、超純水に厳密な基準や定義はない。半導体ウエハや液晶基板表面などの洗浄用に使われる水には、DRAMなどの集積度上昇と比例して高純度が求められる。現在、超純水中の不純物の濃度を示す指標にはppt(1兆分の1)が用いられ、1pptとは東京ドーム1杯分の水に角砂糖3分の1個程度の不純物が混じる量だ。最先端の32ナノメートルクラスの半導体製造では金属イオン濃度0・1ppt以下が必須条件とされ、今後はさらに純度が極まり、ppq(1000兆分の1)の世界に入っていくとみられている。

「唯一の基準が顧客の最新の要求」(森田博志・開発本部グループリーダー)という世界なのだ。半導体製造では、国際半導体技術ロードマップ(ITRS)により、求められる水質などの基準が示されている。しかし、より高集積・高性能を競う半導体メーカーの要求は、つねにそれを上回る水準なのだという。

“顧客と一体路線”をさらに深化させたのが、超純水供給事業である。栗田が顧客の工場内に超純水製造システムのラインを設置し、超純水そのものを供給していく事業だ。いわば機械屋から“水売り”への転身である。顧客は設備投資や人件費などを削減することができ、栗田としては長期契約で安定した収入が得られるという新しいビジネスモデル。初期投資に耐えられる資金力が必要だが、有利子負債ゼロ、自己資本比率77%の栗田の財務力がモノを言った。

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