客の懐の中で進化を追う、「超純水」はサービス業だ《戦うNo.1技術》
一方、排水の再生(回収・再利用)も顧客から要求の多いテーマだ。すでに国内の半導体・液晶工場では、使用した超純水の約8割を回収・再利用している。工場用水では、取水量や地下水のくみ取り量などで制限がある場合が多い。個別に水質が異なる回収水をどう仕分け、合流させていくかが技術的なキーとなる。
特に、今後成長が望める中国は、原水が少なく、限られた水も不純物が多いなど、水の再利用へのニーズは極めて高い。栗田では「回収・再利用の技術が今後の競争力に直結する」(依田氏)と見ている。
薬液使用量の削減、排水の再生いずれにおいても、超純水供給事業で積み上げた技術・ノウハウが、栗田の競争力の土台となっている。“水売り”には、装置、薬品、運転管理などあらゆる技術の総動員が必要で、それによって技術革新の相乗効果が発揮でき、低コストかつ効率的な水資源の活用につながる。顧客の懐の中には想像を超える“宝の山”があったのだ。
現在、栗田が持つ水関連技術の特許数は1534件(10年3月末)で国内トップ。2位の荏原の倍以上に及ぶ。これは栗田が、薬品を含むサービス事業が総売上高の8割強に達するなど、機器主体の同業他社に比べ事業領域が幅広いことによる。
水関連では日本には逆浸透膜など世界をリードできる技術は多い。が、欧州のいわゆる“水メジャー”に水ビジネスで大きな後れを取っているのは、プラントを運営管理するノウハウが不足しているからだ。
日本では自治体が上下水道を運営してきたのがその背景だが、栗田が運営部門に参入したことは、海外からの注目を集めている。栗田の外国人持ち株比率が36%と高い点に、それは如実に表れている。トータルでのサービス重視は世界的要請なのだ。今後はアジアを中心とする海外の顧客とも、サービス重視の象徴である超純水供給事業を通して信頼関係を築いていくことが課題になる。
「超純水開発に終わりはないが、解決策はいつも現場にある」(森田氏)。顧客の懐に飛び込み、顧客目線で課題に当たる。水ビジネスとはサービス産業--。今日流の商売哲学が、栗田の技術者のDNAには深く刻み込まれているようだ。
(野津 滋 =週刊東洋経済2010年6月12日号)
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