無観客「五輪会場エリア」を回って見た悲痛な現実 五輪後に重くのしかかる施設維持費という問題

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施設周辺はお台場同様、バリケードで覆われ、近づけなかったため、海の森大橋を渡って東京港臨海道路側から全体像をチェックしようとした。が、こちらにもパトカーがいて奥までは侵入できない。

仕方がないのでやや手前から現状を確認したが、美しく整備された仮設の観客席は世界各国の国旗で彩られ、大型映像装置も設置されていた。億単位に上るであろう有観客の準備が水泡に帰した現場を目の当たりにして、都民の1人として暗澹たる思いになった。

海の森水上競技場の様子(写真:筆者撮影)

そもそも同競技場は2019年段階で維持費が年間2億7100万円がかかり、大会後も年間1億5800万円というマイナス収支を見込んでいた。指定管理者の海の森水上競技場マネジメント共同企業体はスポーツ・健康・文化をテーマにしたイベント実施やジョギングコースとしての活用を考えていた様子。五輪の1年延期を受け、昨年10~12月には施設見学会や競技体験会、フィットネスプログラムなどを実施して、五輪後への布石を打ってきた。

だが、コロナ終息が見えない中、当面は小規模のアクションに限られるだろう。国内にはカヌー競技者が350人ほどしかおらず、ボート競技を含めても1000人に達しない状況だけに、競技会もそうそう開けない。先々が思いやられると言うしかないだろう。

五輪後の活用にも暗雲

気を取り直して、東京ゲートブリッジから葛西臨海公園方面へ移動。約73億円の総工費をかけて2019年7月に完成したカヌー・スラロームセンターに行った。

厳戒態勢のカヌー・スラロームセンター(写真:筆者撮影)

だが、こちらも厳戒態勢が敷かれ、近隣の運送業者施設の出入口にまで警察官が目を光らせていて、施設に近づけない。やむをえず遠目から眺めると、海の森水上競技場同様、世界各国の国旗がはためく仮設スタンドが目に飛び込んできた。

これも無観客五輪には不要なもの。コロナ感染リスクが比較的抑えられた屋外競技だけは観客数を減らして有観客にするという可能性はなかったのか……。そんな思いに駆られて仕方なかった。

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