9.11の反省からCIAが「人材の多様化」進めた意味 悲劇を繰り返さないよう求められた組織の変革

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敬虔なイスラム教徒で、アメリカの愛国者でもあるファヌーシは、引き続きアウラキの説教を分析した。するとアウラキが仕掛けた西側諸国への脅威が徐々に浮かび上がってきた。「アウラキはブログやメディアへのインタビューを通して信者に密かにメッセージを伝えていました。(中略)しかしそれを読み取るには、まずさまざまな状況を把握する必要がありました。何が起こっているのか、何を起こそうとしているのかをつかまなければ、彼の狙いを阻止することはできません」。

2010年4月、オバマ大統領の承認を受けて、アウラキはCIAの暗殺リストに挙がった。そして2011年9月30日、イエメン南西部に潜伏中だったアウラキは、CIAの指揮のもと、米統合特殊作戦軍(Joint Special Operations Command)の無人機(ドローン)攻撃によって殺害された。この頃には、アメリカ政府はアウラキを世界でもっとも危険な人物の1人と認識していた。あるサウジアラビアのラジオ局は、彼を「インターネットのビンラディン」と呼んでいたという。

いわば「英語を話す人材スカウト」

2015年、『ニューヨーク・タイムズ』紙の国家安全保障担当記者、スコット・シェーンは、アウラキに関する著書『Operation Troy: A Terrorist, a President, and the Rise of the Drone(トロイ作戦─テロリスト、大統領、ドローンの台頭)』で次のように指摘している。

アウラキはアルカイダにおいて、ひいてはジハードという大義名分のもとで、英語を話す人材スカウトとしてもっとも有名で影響力のある人物だった。(中略)彼は何よりも説得術に長けていた。(中略)そしていわゆるDIY戦略のパイオニアだった。(中略)スカウトした人材が爆弾の作り方を知りたいと言えば、アウラキがマニュアルを提供した。ちょうど今イスラム国(ISIS)がやっているようなことの先駆者だった。つまり西側で暗躍する人材に、細かい指示を待つのではなく、自分たちでどんどん攻撃方法を考えて実行しろと奨励していたのだ。

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