9.11の反省からCIAが「人材の多様化」進めた意味 悲劇を繰り返さないよう求められた組織の変革

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私はファヌーシに、情報機関における多様性について聞いてみた。するとこんな答えが返ってきた。

情報機関の関係者の間ではよく言われていますが、まずCIAに志願するマイノリティの数が少なすぎます。また志願者の親族に外国籍(非アメリカ市民)の人物がいると、スパイ活動などの懸念が出て採用プロセスに影響する場合があります。一方で採用担当者には、文化や経験やものの見方など自分たちに近い背景の候補者を選ぶ傾向が見られます。私の採用を決めたのが黒人女性だったことも偶然ではありません。

多様な人材を採用するとCIA職員の質を下げるリスクがあるか、という質問にはこう答えてくれた。

もちろん文化的、民族的な背景が違うという理由だけで職員を採用するべきではありません。それは危険な過ちです。しかし採用の幅を広げれば、才能の幅も広がるでしょう。「優秀かつ多様」な人材を採用するチャンスになって、そのあとは連鎖的な効果が生まれます。マイノリティの優秀な人材を雇えば、新たな出願者が増えて、才能の幅がさらに広がっていくはずです。

人材の多様化は道半ば

9.11以降、CIAは有意義な多様性に向けて前進を始めた。しかし問題はまだなくなってはいない。2015年の内部報告書では、上級職の多様性が乏しいとの指摘がなされている。それについて、当時の長官ジョン・ブレナンはこう発言した。「調査チームはCIAの内情を厳しい目で検討し、明白な結論に達した。CIAはさらに多様性に富んだ、包括的な環境作りの努力をしなければならない。それが我々の今後の使命である」。

『多様性の科学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

ファヌーシは現在、民主主義防衛財団〔アメリカの保守系シンクタンク〕の経済金融力センターで上級研究員を務めるほか、諜報活動の専門家、国際会議の定例講演者としても活躍している。またポッドキャストも開設しており、アメリカ人で黒人のムスリムである自身の生い立ちから、地球規模の安全保障問題まで熱く語っている。2012年にCIAを辞職した際には、国家テロ対策センターの元所長、マイケル・E・ライターの署名が入った記念の盾を贈られた。

盾にはファヌーシへの感謝の言葉が刻まれていた。「貴殿の絶え間ない活動が、アメリカ政府の最高レベルに常に寄与し続けたことをここに表する」。

マシュー・サイド コラムニスト、ライター

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ましゅー・さいど / Matthew Syed

1970年生まれ。イギリス『タイムズ』紙の第1級コラムニスト、ライター。オックスフォード大学哲学政治経済学部(PPE)を首席で卒業後、卓球選手として活躍し10年近くイングランド1位の座を守った。英国放送協会(BBC)「ニュースナイト」のほか、CNNインターナショナルやBBCワールドサービスでリポーターやコメンテーターなども務める。

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