菅政権は末期に、酒取引停止問題で露呈した限界 首相の指導力が急低下、募る衆院選への不安

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西村氏は、その対策を菅首相らに示したのは7日のコロナ対策関係閣僚会議だったことも認めた。ただ、菅首相や出席閣僚は関心を示さず、議論の対象にもならなかったと説明。菅首相の「具体的に議論していない」との釈明を裏付けてみせた。

しかし、「金融機関を利用しての関係業者への圧力という異様な提案に何も反応しなかったとすれば、菅首相らの認識不足はひどすぎる」(経済閣僚経験者)との指摘も多い。菅首相サイドは「西村氏が余計なことを言ったからだ」と不満たらたらだが、「内閣全体の責任であることは明らか」(自民長老)にみえる。

「自公以外」がネット上でトレンド入り

酒類販売事業団体はそもそも自民党の有力な支援組織で、酒類の小売業者は全国小売酒販政治連盟を結成している。今回の要請に対して同連盟会長らが自民党本部を訪れ、「得意先からの注文を拒否することは、長年培ってきた信頼関係を毀損する。取引停止に対する財政的支援が何ら担保されないまま、一方的に協力を求めることは承服できない」とする要望書を突き付けた。

こうした動きと連動する形でネット上では「自民党と公明党以外に投票します」との書き込みがあふれ、ツイッターでは「自公以外」というワードがトレンド入りする事態となった。 

これについて自民党内には「所詮はネットの声」(ベテラン議員)と軽視する見方もあったが、若手議員の間では「都議選の自民敗北は、ネットでの都民の反発を見誤った結果」と指摘する声が相次いだ。東京が地盤の有力閣僚も「『自公以外』という言葉がネットを通じて無党派層に広がれば、自民は壊滅的打撃を受けかねない」と危機感を露わにした。

騒動の最中である14日、菅首相は来日中の国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と会談。「今回の東京大会はオリンピックの歴史を書き換える」(バッハ氏)などと大会成功への連携と協力を確認してみせた。

その五輪は1週間後に開幕となる。ところが、主催都市・東京の新規感染者数は増える一方で、感染症専門家の多くは「五輪開幕時には7日間平均で1000人を大きく超える」と予測している。

菅首相は西村氏の対応について「感染防止のために朝から夜まで頭がいっぱいで」と擁護してみせた。しかし、現状をみる限り、「西村氏以上に、五輪、コロナ、ワクチンで頭がいっぱいなのが菅首相」(自民長老)というのが実態かもしれない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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