菅政権は末期に、酒取引停止問題で露呈した限界 首相の指導力が急低下、募る衆院選への不安
文書の題名の末尾には「依頼」と記載されており、コロナ対策室が菅首相に事前説明していたことも明らかになった。「まさに政府ぐるみの要請」(自民幹部)だったわけで、菅首相は9日の段階で西村氏発言について「承知していない」としらを切ったが、主要野党は「すべては最高指揮官の菅首相の責任」と勢いづいた。
深刻化する事態に焦った菅首相は14日午前、「先週の事務方の説明の中で言及しているということだが、要請の具体的内容について議論したことはない」と釈明。そのうえで「すでに要請は撤回されているが、多くの皆様に大変ご迷惑をおかけしたことをお詫びしたい」と陳謝した。
集中砲火を浴びた西村氏も、「できるだけ多くの方に協力いただきたいという強い思いからの発言だったが、趣旨を十分に伝えきれず反省している」と釈明。野党からの辞任要求には「私の責任は何としても感染拡大を収めることだ」と繰り返した。
与党の重鎮からも苦言が相次ぐ
その一方、麻生太郎副総理兼財務相は13日の記者会見で、「海外出張中に途中段階の報告を受けたが、違うんじゃないかと思って『放っておけ』と言った」と苦々し気に発言。梶山弘志経済産業相も「強い違和感を覚えた。了承した事実はない」と明言した。
自民党の二階俊博幹事長は13日午前の総務会で「誤解を受けることがないよう、今後は事前に党に相談してもらい、発言には慎重を尽くしてもらいたい」と苦言を呈した。
緊急事態宣言の発令と同時進行となったのが、今回の一連の迷走劇だ。その経過や結果は、「内閣全体が感染急拡大への焦りで正常な判断ができず、世論の反発で慌てふためいて、西村氏に責任をかぶせて逃げ切りを図った」(閣僚経験者)とみられても仕方がない。
14日午前の菅首相の陳謝も、14、15両日に開催された衆参両院内閣委員会の閉会中審査で、野党の追及をかわす意図があったのは間違いない。閉会中審査で野党の厳しい追及を受けた西村氏は、これまでの「ああいえばこういう」式のしたたかな答弁ぶりが影を潜めた。「私の判断ミス」と殊勝な表情で謝罪し続け、菅首相をかばう姿勢も際立った。
西村氏の説明によると、酒類取引停止に関する金融機関と酒類販売業者への要請を策定したのは、西村氏が所管する内閣官房コロナ対策室。西村氏は「関係者との意見交換の中で最終的に出てきたのが今回の対策」と繰り返したが、発案者については言葉を濁した。
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