4度目の宣言、「禁酒徹底」は二転三転で広まる混乱 撤回相次ぐ政府方針、銀行や酒販売業者も困惑

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内閣官房と国税庁は7月8日付で、酒類業中央団体連絡協議会の各組合宛てに、酒類の提供を続ける飲食店との取引停止を依頼する事務連絡を文書で通知。酒類の販売事業者に対し、取引先の飲食店が宣言下での自治体の要請などに応じていないことを把握した場合、「当該飲食店と酒類の取引を停止するようお願いする」と明記した。

全国小売酒販組合中央会はこれに対して抗議文を出し、「得意先からの注文を拒否することは、信頼関係を毀損する引き金となりうる」と猛反発。「財政的支援が担保されないまま一方的に協力を求めることは承服できない」とも訴えた。関東の飲食店に日本酒を提供する酒蔵の経営者は「ただでさえ売り上げ減が長期化しているのに、数少ない注文をむげにすることは受け入れがたい」と憤る。

各方面から噴出する疑問や怒りの声を受け、ここに来て政府は方針を急きょ転換。取引停止を求める依頼についても、文書発出の5日後の7月13日に撤回を決めた。

この事務連絡には法的な問題を指摘する声もあった。特別措置法に基づいて行う休業要請などと異なり、今回の取引停止の依頼は法的根拠がなく、「お願い」にとどまるものだったからだ。

宣言下でも通常営業を続けてきたグローバルダイニングの代理人弁護士・金塚彩乃氏は「(法的根拠に基づく)正式な文書ではないとの判断は(事業者にとって)難しく、従わなくてはいけないと思ってしまうのではないか」と指摘する。

宣言を受け業績予想取り下げも

依頼が撤回されても、不安は残る。規制官庁が事業者を萎縮させた事実に変わりはないからだ。都内を中心に酒類などの配達サービスを行うカクヤスは、取引先の飲食店から「今のまま(酒類を)注文できるか」などの問い合わせを受けたという。

カクヤスのIR担当者は「酒屋にも(組合を通じて、取引停止を求める)連絡が来ていた。(これまでの宣言とは)飲食店側の受け止め方も違うのでは」と話す。同社は4度目の宣言で酒類販売に大きな影響があると見込み、7月12日に今期の業績予想を取り下げ、「未定」とした。

酒類の販売業者や酒類メーカーにとっては、7~8月と言えばビール販売の最盛期。その時期の大部分が宣言発令の対象期間となり、大きな影響を受けることは間違いない。

飲食店への圧力を強めつつも二転三転する政府の方針からは、五輪開催を目前に控えた焦りもうかがえる。実効性のある感染抑止策が打ち出されない限り、4度目の宣言は事業者の不満を増大させるだけの結果になりかねない。

【情報提供のお願い】東洋経済では、外食業界が抱える課題を継続的に取り上げています。こちらのフォームでは飲食店経営者や従業員の方々からの情報提供をお待ちしております。
兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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