4度目の宣言、「禁酒徹底」は二転三転で広まる混乱 撤回相次ぐ政府方針、銀行や酒販売業者も困惑
世界的祭典は、「緊急事態」のさなかに開かれることとなった。
東京五輪開幕まで2週間を切った7月12日、東京都で4度目となる緊急事態宣言が発令された。期間は8月22日までを予定する。
都内の1日当たりの新型コロナウイルス新規感染者数は、7月2週目以降に1000人近くまで増えた。宣言発令は、こうした感染拡大傾向を踏まえたものだが、前回の宣言解除からわずか3週間。さらに今回は発令時点で、対象期間を1カ月余りと比較的長く設定した。7月23日から8月8日までの、五輪期間中の感染拡大抑止を念頭に置いた対応であることは明らかだろう。
3度目の宣言と同様、酒類やカラオケを提供する飲食店は休業が要請される。大手居酒屋チェーンなどは、一部店舗を再び休業するなどの対応に追われた。
しかし長引く要請により、宣言下でも通常営業に踏み切る店は増加。飲食店の取り締まりを強化するため、政府が矢継ぎ早に打ち出した新たな方針が、あらゆる方面に波紋を広げている。
波紋を呼んだ「金融機関の働きかけ」
金融業界などにも大きな動揺を招いたのが、7月8日の記者会見上での西村康稔経済再生担当相の発言だ。酒類の提供停止などに応じない飲食店への対策として、金融機関からも順守するよう働きかけをしてほしいと呼びかけた。
コロナの打撃を受けた多くの飲食店は昨年来、銀行からの借り入れで息をつないでいる状況だ。突如持ち上がった政府からの協力依頼に、ある地方銀行の幹部は「(休業を促して)貸し倒れになることも考えると、金融機関側にインセンティブはない」と切り捨てる。大手銀行の関係者も「飲食店の酒類提供が止まらなければ『金融機関の働きかけが足りない』と言われかねない。(政府は)責任を転嫁したいだけじゃないか」と、戸惑いを隠さない。
そもそも資金提供元である銀行からの要請となれば、「優越的地位の濫用」につながりかねない。反発は瞬く間に広がり、西村経済再生担当相は翌日に方針を撤回する異例の事態となった。
だが、混乱の種はこれだけにとどまらない。