定期券需要減、売り場は「シェアオフィス」に変身 東急駅員らが「手作り」、約2カ月でスピード開業

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企画チームを現場から募っただけでなく、駅係員らも計画段階から参加した。両駅とも3人の駅係員が中心となり、ほかの係員も協力。施設名の「TSO」(東急レールウェイシェアオフィスの頭文字)は各駅に募集して決めた。ポスターやロゴもデザイン類が得意な駅係員が手掛けたという。

テーブル上にある注意書きなども「駅務室で描きました」と女性駅係員。注意書きを立てる木製スタンドも手作りで、「こういうのが得意な人もいるんです」と笑う。一部の小物類には、近年改築した池上駅や戸越銀座駅(ともに池上線)で使用していた廃材を再利用している。

机にある注意書きや木製のスタンドなどは駅係員がつくった(記者撮影)

また、営業時間や料金設定も「日々お客様と接している現場係員が考えた」(田島氏)。携わった駅係員の1人は「日ごろは駅業務が中心なので、こういった機会にぜひほかの仕事にチャレンジしてみたかった。(ほかの駅係員など)みんなの協力で完成できた」と話す。

長津田駅のシェアオフィス整備にかかった費用は、内装・備品を含めて約150万円。収益性は今後の運営次第だが、低コストで素早く整備するという狙いは達成できたといえる。ただ、今後も同様の取り組みを進めていくかは現時点では未定。澤口氏は「本当にシェアオフィス事業がいいかどうかも1年経てば変わってくるかもしれない。収益性があり、かつお客様に喜ばれる施設は何か、並行して検討を進めていきたい」という。

駅オフィス、本当に定着する?

東急はこれまで法人向けのシェアオフィス「NewWork(ニューワーク)」の展開を進めてきたが、駅に個人向けを設けるのは今回が初だ。

駅構内やコンコースにシェアオフィスの設置を進める鉄道会社は増えている。JR東日本は「STATION WORK(ステーションワーク)」の名称で、シェアオフィスや個室ブース型のオフィスを駅ナカを中心に展開。2020年秋には、両国駅に「成田エクスプレス」の車両を停めてオフィスとして活用する実証実験も行った。

東京メトロも、富士フイルムビジネスイノベーションと共同で個室型ワークスペース「CocoDesk(ココデスク)」を各駅に展開。7月6日には、新たに8駅13台を設置し計31駅56台に拡大すると発表した。ほかにも大手私鉄をはじめとする鉄道各社の駅で同種の施設設置が進む。

従来と同様の乗客数回復が見込めない中、増えるテレワーク需要を取り込もうとする鉄道各社。今後、定期券売り場などの施設閉鎖による遊休地が駅構内に生まれる可能性は増えそうだ。駅の商業施設が「駅ナカ」として定着したのと同様に、「駅オフィス」が浸透する日は来るだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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