定期券需要減、売り場は「シェアオフィス」に変身 東急駅員らが「手作り」、約2カ月でスピード開業
閉鎖後の課題となったのが旧売り場の活用だ。長津田駅と武蔵小杉駅以外は定期券売り場に店舗やトラベルサロンなどを併設しており、定期券販売を取りやめてもスペース自体は残る。だが、両駅は定期券売り場が単独で存在していたため、営業終了後は遊休施設となってしまう。
そこで生まれたのが、旧売り場をシェアオフィスとして活用するという発想だった。「定期券売り場閉鎖による固定費削減だけでなく、新たな収益源としても活用していきたい。定期利用が減ったのはテレワーク需要増という側面があるので、新たな業態で駅施設を使えないかと考えた」と、同社鉄道事業本部運輸計画部の澤口俊彦氏は語る。
背景には、親会社の東急が1月~4月末にかけて実証実験を行った通勤定期客向けの会員制スマホサービス「DENTO(デント)」で、沿線のカフェやスポーツ施設などを使って提供したシェアオフィスのニーズが高かったこともあるという。「気軽にドロップイン(一時利用)で使える施設はまだ少ない。そういった部分に収益性があるのではないかと考えた」(澤口氏)。シェアオフィスとしての活用検討が本格的に始まったのは5月17日。準備期間は2カ月足らずだった。
駅係員や運転士が企画チームに
今回の企画の特徴は、プロジェクトチームのメンバーとして乗務員や駅係員など現場社員の参加を募った点だ。「駅利用者のニーズをつかめるのは日々お客様と接している駅係員や乗務員ではないかと。また、こういった施策に関わってもらうことでポテンシャルを最大限発揮してもらえればと考えた」と澤口氏はいう。
同社には一時的に繁忙となるプロジェクトなどについて、応募により他部門の社員が参加できる制度があるといい、今回は運転士1人と駅係員2人が応募し、専属の企画担当となった。
もともと東横線の運転士という田島昌隆氏は、最初は同社が5月から実証実験している定期券サービス「TuyTuy(ツイツイ)」をPRするための「動画編集に興味がある人」という募集にひかれて応募。「公式チャンネルに編集した動画を上げています」(田島氏)。そのプロジェクトに関わる過程で、シェアオフィスの開業にも携わることになったという。
同様に企画担当メンバーの小林潤一郎氏は、3月末まで田園都市線あざみ野駅で駅係員として勤務。「現場の声が欲しいということで力になれるのではと思ったのと、駅業務の中では経験できないことに挑戦してみたかった」と語る。
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