セブン&アイ、井阪体制6年目でみえた「大変化」 当初予定から1年遅れで中期経営計画が発表に

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前回の2017~2019年度の中期経営計画は、国内事業の「止血」に軸足を置いたものだった。特にイトーヨーカ堂や百貨店のそごう・西武は、投資効率の低さが問題視され、前中期計画以降に閉店が進んだ。

イトーヨーカ堂の店舗は、2016年度初めの182店から2020年度末には132店へと減った。減少分には、同じセブン&アイグループのヨークに移管した「食品館」などの20店も含むが、イトーヨーカ堂の三枝富博社長は、今年2月の東洋経済の取材で「止血としての閉店は8割方できた」と話した。2016年度初めに23店あったそごう・西武も、店舗譲渡や閉店を経て、直近では10店まで減少した。

見えにくい「成長の方程式」

国内事業の止血にメドがついたことで、新たな中期経営計画では成長戦略を前面に押し出した形だ。しかし、「アメリカのコンビニで中食を伸ばす」と目標が明快な海外事業と異なり、国内の各事業は「成長の方程式」が見えにくい。

そうなったのは、やはり国内事業が成長の決め手に欠けているからだろう。2010年代の大半の時期は、コンビニを多く出店することで国内でも成長できた。今でも国内コンビニ事業が稼ぎ頭であることに変わりはないが、出店拡大による成長余地は限られている。新たな中期経営計画でも、国内の出店についてはほぼ言及していない。

井阪社長(左)は「食品を扱うグループ会社との連携を進めないと、ドラッグストアなど他業態との戦いに勝つのが難しくなっている」と危機感を見せる。写真は7月1日に行われた中期経営計画の説明会のもの(編集部撮影)

加えてコロナ禍で事業環境が激変。「個々の事業では十分な変化対応ができない」(井阪社長)とわかり、「横の連携やシナジーを上げる仕組みが足りなかった」(同)との反省にたった。

そこで新たな中期経営計画ではグループの総合力強化という全体最適策を採ることにした。個の力で成長を描くのは困難なため、各社の連携で弱みをカバーしようというわけだ。

だが、成長期待のまだ残るコンビニ事業に経営資源を集中すべきだと主張する声は依然根強い。アメリカの「物言う株主」であるバリューアクトも今年5月、セブン&アイ・HDは事業を選別すべきだと示唆するコメントを発表した。

北米など海外だけでなく、国内事業でも成長する未来を示せるか。それができなければ、株主から注がれる視線は一段と厳しくなるだろう。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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