居酒屋の低価格バトル、業界大手ワタミの参入で一段と激化
居酒屋大手のワタミが6月から新業態を展開する。キーワードはずばり、「低価格」だ。
業態名は「仰天酒場 和っしょい」。食事は一皿の価格が250円と500円のみなのがウリ。しかも刺し身、サラダ、串物など250円のメニューが7割を占める。
客単価は1800円を想定し、主力業態の「和民」「坐・和民」より900円程度安い。ワタミの渡邉美樹会長は「靴を脱がずにビールを1~2杯飲んでから家路につきたいというニーズは確実に存在する」と、この価格設定を説明する。
しかし、今回の新展開はワタミにとって苦渋の選択だったかもしれない。同社はこれまで、低価格業態への参入は「われわれが求めるサービスの質が維持できない」(渡邉会長)と否定的だったからだ。前言を翻してまで参入する理由は、急速に冷え込んでいく居酒屋需要に対する危機感だ。
2009年11月、ワタミの既存店売上高は前年比13・5%減と過去最低レベルの減少を記録した。自社の厳しい実績に、渡邉会長でさえも「他の低価格業態の影響を受けた」と認める。手をこまねいてはいられない。そんな危機感が、ワタミに方針転換を強いた。
その一方で、低価格業態の先発企業には勢いがある。最も積極的なのは「東方見聞録」「月の雫」の三光マーケティングフーズだ。
同社は既存業態から「全品270円居酒屋 金の蔵Jr.」への転換を昨年後半から急ピッチで実施。今や約150店の過半を低価格業態が占める。転換したほとんどの店舗で、転換前より客数、売上高ともに増加しているという。
07年6月から格安業態を展開していた業界最大手・モンテローザは、参入当時から「笑笑300円厨房」や「白木屋280円厨房」への転換を加速。すでに約150店、全店舗数の1割近くを占めるほどになった。