「ハーバードの心理学者」が教える幸福の時間戦略 「時間への投資」が創造性、生産性を上げる
人々の回答を見て何よりも驚いたのは、時間とお金に関わる決定の多くが実に重要でありながら、それを下すときにはごくささいなものにしか見えないという、ギャップだった。
時間とお金のトレードオフは、見たところあまりに退屈だったり明白だったりするので、私たちはそのトレードオフをしているのに気づかないことが多い。調査をしている間に、そして、自分の人生でも、人々が時間とお金に関して下す決定について、さまざまな話を繰り返し耳にした。
「時間を犠牲にし、お金を手に入れる」
ニコールは大手クレジットカード会社の新任エグゼクティブで、夫のトマスは多忙なVP(ヴァイスプレジデント)だった。2人はめったに同じ市内にいることはなく、もう何年も、いっしょに休暇をとったことがなかった。ある日、トマスは思いがけない幸運に恵まれた。費用はもつから、国外出張を1週間延長し、スイスアルプスを楽しんでくるようにと、気前の良いクライアントが言ってくれたのだ。これは一生に一度のチャンスだった。トマスは妻に頼み込んだ。
「ニコール、どうか、いっしょに来てほしい。数日間だけでいいから」
ところがニコールは、ため息をついて答えた。「行けない。大切な会議があって、欠席するわけにはいかないから」。トマスはしかたなく代わりに妹のリーアと出かけ、思う存分楽しみ、それは兄妹のどちらにとっても「これまでで最高の旅」となった。
「5年たった今でも、あの旅行を話題にするんですから」とニコールは私にこぼした。「そのうえ、いつもトマスは私に聞くんです。『ニコール、あれはなんの会議だったんだっけ?』って。『正直に言うと、思い出せないの』と私が答えると、決まってやり返されます。『重要って、そんなものだったのか?』と」
後にニコールは、とろうと思えば休暇がとれたこと、そして、その会議は必ずしも出席しなくてよかったことを認めた。彼女のチームは、彼女抜きでも大丈夫だった。
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