「ハーバードの心理学者」が教える幸福の時間戦略 「時間への投資」が創造性、生産性を上げる
悲惨な話に聞こえるし、実際、悲惨だ。私は調べてみて思い知らされた。事は本当に重大なのだ。人はどうしても、働いてお金を稼ぐことを重視し、より質の高い時間をより多く手に入れることをおろそかにしてしまう。私も含め、ほとんどの人が、時間をお金ほど大切にしそこなう。こうしてお金にばかり目を向けているから、ストレスと不幸と孤独感が蔓延し、多くの社会がそれに手を焼いているのだ。これは、金銭的にも、それ以外のかたちでも高くつく。研究者はこの現象をひとまとめにして、「タイム・プア(時間的に貧乏)」と呼ぶ。これは慢性的な現象だ。
私は時間とお金の間のトレードオフを計算しているので、自分自身が下す決定の多くが最適ではないことを知っている。時間に関しては、誰もがお粗末な選択をしやすい。つまり、お金を優先し時間を犠牲にすることによって被る長期的な代償を過小評価しているのだ。
ただ、選択はいつも簡単で明白だとはかぎらない。時間とお金についての決定には、正しい取り組み方が1つしかないわけではないことが、研究しているうちにわかった。たとえば、先のニコールが正しい決定を下したかどうか、私には断定できない。ただ、一般論としては、別の決定を下していたほうが幸せだっただろうことをデータが示している、というだけの話だ。人生で望むものは人それぞれだし、同じ人生でもその時々で望むものは変わってくる。最善の選択は不変ではないのだ。
マネー・イズ・タイム「時間に投資すること」
私が行ったある実験をご紹介しよう。
働いている成人に2回、40ドル支払った。最初の週末には、その40ドルで自分のためにモノを買うように言ったので、参加者はTシャツやボードゲームや化粧品などを買った。次の週末には、「どんなかたちでもかまわないから、時間を節約する」ために40ドル使うように言ったので、彼らはテイクアウトの食事を注文したり、バスの代わりにタクシーに乗ったり、食料品や雑貨などの買い物を配達してもらったりした。つまり、お金を使って、時間を買ってもらうことにした。
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