評価額2億円!幻のバイクを持つ男のスゴい半生 世界に1台のみドゥカティ社「アポロ」を公開
博物館をオープンさせる少し前から、バイク以外のアンティーク収集も行うように。文化遺産や歴史的建造物の解体があるときは、自ら現場へ行って建材や建具を引き取る。昭和の生活雑貨や家具、建具、映画ポスター、音響器具などあらゆるものを集めた。
「博物館は単品だと運営が難しいから、展示品をクロスオーバーしていかないと。バイク好きの人に連れられてきた人たちも楽しめるように」
強みは情報収集力とフットワークの軽さだ。解体現場は時間との勝負である。各地にいる知人や友人から解体の情報が入ると、自ら軽トラに必要な道具を積んで駆けつける。
「隙間なんですよね。大企業や公的機関ができないことを個人でやっている。大きいとこは決定まで会議を重ねるし、時間がかかる。僕は『壊すけど今日なら入っていいよ』って電話が来たらすぐ行く。個人で億単位のお金は動かせんけど、即決できる強みがある」
もちろん解体現場に携わる人たちへの気遣いも忘れない。ヘルメットや安全靴などの装備を整え、邪魔にならないよう配慮しながら引き取りたいものを交渉する。仲良くなると、最後は「あれも持って行かんね」「あれとっちゃるよ」と言ってくれることも。
「誰かにお金を渡して作業を委託するんじゃなくて、自分が建物の中に入って1つひとつ集めていくやり方が性に合っている。それが実際に自分で集めたってことでしょ」
バブルの時代福岡で栄えたマリアクラブ、炭坑王・麻生家の別府市の別荘、赤レンガ建築が見事な長崎刑務所など100件を超える解体現場へ赴き、集めた物は1000トンもの重量になる。一部は展示し、それ以外は20ある倉庫に保管している。
過去と未来をつなぐ岩下さんの挑戦
岩下コレクションに展示してあるのは古いアンティークだが、それは決して遠い過去のノスタルジーではない。それらの品々が生まれた背景にある先人たちの挑戦と冒険が、今を生きる私たちの心に力強く訴えかけてくるのだ。
開発に情熱を注いだ設計者たちの挑戦、「一秒でも早く」とバイクレースに夢見た人たち、子どもたちが憧れたかっこいい車やバイクの世界。館内を巡っていると、人々の情熱やエネルギーが伝わってきて、心揺さぶられる。
オーナーの岩下さんも同じく、人にエネルギーを分け与える人である。近くでPizzeria 櫟の丘を営む山﨑さんは話す。
「開業しようと最初のお金がない時に『僕一人では使いきれんけん、これを使えばいい』と倉庫にある貴重な建具や建材を分けてくれて気にかけてくれました。行動力も情熱もすごい人ですよ」
個人博物館の運営は決して楽ではない。赤字続きの運営を岩下さんの個人資産を投入して続けているのが実情だ。しかし、やめようと発想すらしたことがないという。
「ウエストミンスター(蓄音機)を置いて、極上の紅茶珈琲を提供してクラシック聞きながら鑑賞できる場所を造りたい」「江戸時代の酒蔵を解体したものがあるから、これでビアホールをやってみたい」とやりたいことは尽きないそうだ。
過去と未来をつなぐ岩下さんの挑戦は続いていく。
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