「民主」に寄りかかって国際政治を図る危うさ

G7首脳会談で見えた中国の存在感とG7の黄昏

イギリスで開催された2021年のG7サミット。対中政策で歩調をそろえたかに見えるが……(写真・Bloomberg Finance LP)。

2年ぶりに対面で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、米中関係を「民主主義vs専制主義」と見なすアメリカのバイデン大統領の主導で、「専制中国」に対抗して民主主義国家が団結する構図を演出した。日本のメディアや識者もその対立軸に飛びつき、「専制」を代表する「ヒール(悪役)」として中国を描く。専制に比べ「民主」とはなんと心地よく耳に響き、正義と善に満ちた言葉か。ほとんどユートピア(理想郷)の代名詞のように使われ、抗い難い「魔力」すらある。だが「民主vs専制」から世界を切り取る乱暴な二元論は、実態を見失いかねない危うさに満ちている。

中国の「ワクチン外交」に対抗心むき出しだった

まずG7首脳会議を振り返る。首脳声明は、アメリカと日本が強く主張した台湾情勢をはじめ香港、新疆ウイグル問題で、自由と人権への尊重を求める文言を盛り込んだ。メディアは「G7『民主主義団結』鮮明 対中国、宣言に『台湾海峡の安定』などと、中国をネガティブな存在にすることによって、G7が団結する構図を描いた(「G7『民主主義団結』鮮明 対中国、宣言に『台湾海峡の安定』」朝日新聞夕刊2021年6月14日)(https://digital.asahi.com/articles/DA3S14938845.html)。

一方、新型コロナ感染が止まらない世界へのポジティブなメッセージとして(1)2022年にかけ10億回分のワクチン供与、(2)途上国へのインフラ投資、を打ち出した。だがワクチン供与は、中国の「ワクチン外交」に対抗する思惑がむき出しだし、インフラ投資に至っては中国の「一帯一路」の後追いに過ぎない。

日米をはじめ先進7カ国が束にならないと、中国に対抗できないのかという印象を拭えなかった。しかも2つともG7の資金配分は不明であり、実効性には疑問符がつく。1973年のオイルショックを機に、世界資本主義の「金持ちクラブ」としてスタートしたG7は今や、中国の政治・経済力を前に「斜陽クラブ」と化したかのようだ。

肝心の対中批判もすんなり決まったわけではない。フランスのマクロン大統領が「G7は中国敵対クラブではない」と明言するように、「戦略的自律」を掲げるフランスやドイツ、イタリアは当初、台湾の宣言盛り込みには消極的だった。

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