防衛装備移転三原則に大きな抜け穴 初めての2事例を検証すると問題だらけ

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今回、NSCで認可されたもう一つの案件の日英共同研究は、英国中心に仏、独、伊、スペイン、スウェーデンの6カ国が開発中の視界外射程空対空ミサイル(BVRAAM)「ミーティア」が対象。防衛省は、この欧州共同開発の長距離ミサイルを、日本が次期主力戦闘機として42機導入する予定のF35戦闘機に搭載することを検討している。

英防衛大手MBDAのミサイル関連技術に、三菱電機が保有するシーカー技術を組み合わせ、シミュレーションを通じてミサイルの精度を高める技術を共同研究する。

航空機利用者のためのサイトのFlyTeamは22日、「ミーティア自体がMBDAというNATO諸国による国際合弁企業の開発であることから、これも研究成果がイギリス以外へ販売されることが想定されます。ミーティアはグリペン、タイフーン、ラファールが装備する予定で、F-35ライトニングIIへの搭載も期待されています」と報じた。

イスラエルが紛争当事国ではない?

日英共同研究のミサイル技術向上の成果が将来的にF35に生かされる場合、イスラム原理主義組織ハマスとの戦闘を続けているイスラエルにも日本のミサイル技術が流出する恐れがある。F35は、米英など9カ国が共同開発中だが、そうした開発参加国に加え、イスラエルやシンガポール、日本、韓国が導入を予定している。最終的には世界各地で3000を超えるF35の導入が見込まれている。

問題は、F35の維持管理においては、すべてのユーザー国を想定したALGS(Autonomic Logistics Global Sustainment)という国際的な後方支援システムを採用していることだ。ALGSでは、ハマスとの戦闘を続け、多くの民間人を犠牲にして批判を浴びているイスラエルもF35ユーザー国の一員であることから、F35の部品などの移転を受けることができる。そもそもALGSの強みは、全てのユーザー国が共通の在庫プールを通じて世界規模で部品などを融通し合うことにある。

ただし、米国もイスラエルもすでに独自の中距離空対空ミサイルを生産しており、F35にミーティアを搭載する可能性は低いとの見方もある。

ハマスとの戦闘を続けるイスラエルだが、日本の防衛装備移転三原則では、「紛争当事国」には当たらない。同三原則は、紛争当事国を「武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持し又は回復するため、国連安保理がとっている措置の対象国」と定めており、現在のところ、地球上には「紛争当事国」は存在しないことになっている。アフガンニスタンに出兵中の米国や英国も紛争当事国にはあたらない。それどころか、アフガンもイラクも、そして、イスラエルも紛争当事国になっていない。イスラエルは中東での米国の最大の同盟国であり、米国の軍事支援を伝統的に受け続けている。米国はかつてPAC2もイスラエルに輸出したこともある。

18日の記者会見で、米国からイスラエルのPAC2の今後の輸出について問われた小野寺防衛相は「これは、今回のPAC2自体の生産国であります米軍が、その判断の中で対応されるということだと思います」と述べるにとどまった。

米国の軍事専門誌「Defense News」が毎年発表する最新の「主要軍需企業売り上げランキング」でも、33位に三菱重工業、44位にNEC、51位に川崎重工業、53位に三菱電機が入り、上位100位以内にコマツまでの9社の日本企業がランクインしている。武器輸出の解禁とともに、こうした企業は今後、上位に入っていくかもしれない。

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