防衛装備移転三原則に大きな抜け穴

初めての2事例を検証すると問題だらけ

国内メディアではあまり報じられていないが、このジャイロの米国への輸出認可をめぐっては、あとさき逆なことが起きた。日本政府が、国家安全保障会議(NSC)を17日に開いてジャイロの米国への輸出を正式決定する前に、米国防総省(ペンタゴン)は14日、総額110億ドル(1兆1000億円)の防衛装備品をカタールに売却することで合意したと発表した。米国にとってこのカタールとの契約は今年最大の案件で、戦闘ヘリ「アパッチ」24機や歩兵携行式対戦車ミサイル「ジャベリン」500基のほか、三菱重工から調達するジャイロを使ったPAC2も合意内容に含まれてきた。ペンタゴンは、この巨額契約で、米国内に5万4000の雇用が生まれるとも発表した。

日本がジャイロという日本製品の対米輸出をNSCで正式決定する前に、米国がカタールへのPAC2の売却を決めてしまってもいいのか。そもそもNSCは安倍政権が昨年12月、我が国の外交・安全保障に関する最高意思決定機関として鳴り物入りで設置したもので、そこに諮る前に米国に第三国への日本製品の輸出を決められてしまってもいいのか。

日本の事前同意なしで転売可能

この点について、防衛省装備政策課は「新たな防衛装備移転三原則ではライセンス元に部品を納入する場合、第三国への移転に日本の事前同意を義務付けていない」と説明した。そして、その上で、防衛装備移転三原則の二番目、三番目にあたる、仕向先や最終需要者(エンドユーザー)、適正管理について、「本件海外移転の仕向先は米国、最終需要者はPAC2を生産する米国のライセンス元であり、適正管理の確実性は高い」と強調。ジャイロの管理体制は誓約書などの文書で確認ができるとして、今回のNSCによる輸出認可となった、という。

それでは、米国がカタールとの契約を終えた後であっても、万が一、日本のNSCでレイセオンでの適正な管理が確保されないと判断された場合、ジャイロの輸出不許可はできたのか。この点について、外務省安全保障政策課は「(米国とカタールの契約の)あとからでも(日本の判断で)駄目だと言うことができる」と説明した。

しかし、形式的にはともかく現実的にそんなダメ出しをすることができるかどうかについては、疑問が残る。そもそも武器輸出三原則等の見直しの1つの理由として、1990年代半ば以降、「日米同盟の深化」も挙げられてきた。例えば、2009年8月の「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書では、ライセンス生産品の米国への輸出や、輸出品の米国から第三国への移転を可能とすることが、日米同盟の深化につながると述べられている。2011年6月に当時の北沢俊美防衛相が、日米で共同開発中の海上発射方式の迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」について、日米以外の欧州を念頭に置いた第三国への移転を容認する方針を示した背景にも、米国側からの要請があった。

最近、防衛問題の勉強会で一緒になった陸上自衛隊の幹部(一等陸佐)は「米国にとって、日本はあくまでもワン・オブ・ゼム(one of them)。アメリカは日本の国内事情などに構っていられないのが実情」と指摘した。

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