サンドラッグ「実力派会長」の電撃辞任に映る焦燥 「業界の天才」が築いた利益重視経営から転換へ
だが、サンドラッグも規模を求める拡大戦略に舵を切っている。5月に発表した2025年度までの中期経営計画では、2025年度に売上高1兆円の達成を目指すとしている。昨年5月には2023年に売上高1兆円を達成するとしていたため2年後ろ倒しとはなったが、今後5年間で売り上げを約1.6倍に伸ばすという超強気の数字だ。
食品の取り扱い強化や調剤薬局事業の拡大、ドラッグストアの出店強化で売り上げを伸ばす考えだが、これらは利益率を押し下げる要因にもなる。
食品は一般的に化粧品や医薬品と比べて利益率が低い。調剤薬局事業は各社で争奪戦になっている薬剤師の採用を加速する必要があり、関連の費用や人件費がかさみがちだ。ドラッグストアの出店強化も、店舗の建設や店員の採用などで初期費用が膨らむ。
成長の柱として期待の調剤は「周回遅れ」
さらにいえば、利益率重視路線を転換して売上高1兆円を目指すにしても、その達成は容易ではないだろう。規模拡大路線を進むということは、ウエルシアやツルハの上位2社と正面からぶつかることを意味する。
とくに厳しいのが調剤薬局だ。サンドラッグが展開する1216店のうち、調剤の店舗はドラッグストア併設型と門前薬局(病院に隣接する調剤専門薬局)を合わせた103店(2020年度末)。全店に占める調剤併設率は1割にも満たず、併設率が8割目前のウエルシアなどと比べると”周回遅れ”だ。
加えて、これまで2年に1回だった薬価改定が、2021年からは医療費削減を目的に毎年行われる。市場環境は厳しさを増し、他社に比べ調剤事業の蓄積が少ないサンドラッグにとってはより難易度が上がる。
同社の貞方宏司社長(50)は難しい舵取りを任される。貞方社長は才津氏と同じ長崎県五島列島の出身で、才津氏の薫陶を受けた人物とされている。2009年から副社長を務めたダイレックスでは、生鮮食品の取り扱いを強化し、同社の業績を押し上げた。これが評価され、2019年にサンドラッグの社長に就任した。
規模拡大を無理に追わず高利益率を実現してきた才津氏の経営路線。貞方社長はそこからの転換をうまく図れるか。大手とはいえ生存競争が激しさを増す中、「天才」才津氏の去ったサンドラッグが転機を迎えている。
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