添乗員は見たコロナ禍の「密告ツアー」の修羅場 GoToの効果はなし?団体ツアーの客足は今一つ

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満員電車なみの人ごみの中を、40人もの集団を引き連れて歩く様子を、想像していただきたい。参加者の中から迷子が出ることも、珍しいことではない。そんなことになったら、添乗員は冷や汗ものだ。

周囲はおびただしい人だらけで、騒音に取り囲まれて、迷子からかかってきたケータイの声も、ろくろく聞き取ることもできない。迷子を見つけるまで、イヤな汗が流れ続ける。

それは何も清水寺に限ったことではない。名にしおう観光地ともなれば、多かれ少なかれそのような添乗員泣かせのことが、繰り広げられている。観光大国となりつつあるニッポンの、狂騒曲の1コマなのである。

業界のイケイケ気分は、2020年の東京オリンピック開催決定で、いやが上にも盛り上がる一方であった。ところが新型コロナウイルスの世界的な感染大流行(パンデミック)によって、状況は一変してしまう。わが世の春を謳歌していた業界は、急にハシゴをはずされて、転落の一途を余儀なくされてしまった。

これを機に転職してしまった人も

平和産業たる旅行業界の被害は甚大で、業界内のあらゆる企業が惨憺たる事態におちいってしまった。その中で仕事を得ている添乗員もまた、もちろん例外ではない。半年ほど仕事は、完全にストップ。それでもコロナの勢いが下火になって、国内ツアーの添乗業務は、秋頃からじょじょに復活し始めた。けれども海外ツアーは2020年の末現在、仕事再開の目処はまったく立っていない。

それに対して添乗員たちは、大別すると次の2つの処し方で、厄難をやり過ごそうとしている。まず大方は国内の添乗業務にスライドし、海外ツアーの復活を待つことにするという対処の仕方だ。

一方これを機に、転職してしまった人も少なくない。その人たちも、2通りに分類される。 とりあえずは様子見で、別の仕事についているというグループ。そしてこの騒動を潮に、すっぱりと添乗員から足を洗ってしまった人たちだ。添乗員というのは、収入が不安定な浮草稼業である。今回の感染症の大流行で、改めて寄る辺なき脆弱な職業ということを、身をもって思い知らされた。

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