内閣不信任案、否決で浮き彫りになった「茶番劇」 解散におびえる野党、枝野氏の「不信任案」も
その一方で、枝野氏の弱気は「次期衆院選で野党共闘態勢を構築することへの不安」(立憲幹部)が背景にあるとされる。特に主要野党の選挙を組織的に支える連合と共産の反目が、すべての小選挙区での野党統一候補擁立の大きな障害となり、菅首相らはそこに付け込んだ。
ただ、これまで野党に求められてきたのは「政権打倒に邁進する執念と覚悟」(立憲長老)だ。2020年9月の自民総裁選に出馬した石破茂元幹事長も13日の民放情報番組で、「(自民党は)3年3カ月、野党だったが、そのときに『世間からどんなに批判されようが、不信任案を出して解散に追い込め、そうでなければ野党の意味がない』とたたき込まれた」と枝野氏らの対応を皮肉った。
「会期末解散」はありえなかった
与党内では「菅首相は会期末の解散など考えてもいない」(公明幹部)との見方が支配的だった。仮に会期末に解散を断行しても、一部で取り沙汰された7月4日投開票の東京都議選との同日選は日程的に困難で、衆院選の投票日は最短で7月11日となる。
その場合、解散の時点で菅内閣は職務執行内閣となり、選挙を受けた特別国会召集と首相指名・組閣は7月下旬となる。まさに東京五輪の開幕と重なることになり「政治的にもありえない」(閣僚経験者)からだ。
こうした事情からも、菅首相や二階幹事長の一連の解散発言は「実態のない脅し」(自民長老)だったことは否定できない。4野党の不信任案提出を受け、二階幹事長は自民役員らに「菅首相から粛々と否決せよとの指示を受けた」と説明。解散におびえ続けた枝野氏らに「政治的戦略眼がなかった」(立憲若手)ことも浮き彫りとなった。
枝野氏らが不信任案提出の判断材料と位置づけていたのは、6月9日に2年ぶりに開催された与野党党首討論だった。しかし、枝野氏は東京五輪開催問題に絡めた不信任案を突き付けられず、菅首相も拍子抜けの表情だった。
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