内閣不信任案、否決で浮き彫りになった「茶番劇」 解散におびえる野党、枝野氏の「不信任案」も

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今回、野党が求めた3カ月の会期延長については、国民の間でも支持する声が少なくない。菅首相は民主党政権下の2011年、当時の自民中堅・若手議員の中心メンバーとして、東京電力福島第一原発事故後に国会を閉会していたのでは無責任のそしりを免れないと菅直人首相(当時)へ要請書を突き付けた過去もある。

当時、民主党国対委員長でもあった立憲の安住淳国対委員長は「(今回の国会延長拒否については)『のし』をつけてそっくりお返しする」と憤ってみせた。ただ、こうした攻撃姿勢は「党首討論などで、菅首相は解散をしないとの手ごたえがあったから」とみる向きも多い。

野党陣営で枝野氏「不信任案」も

15日午後の衆院本会議では、枝野氏が不信任案の趣旨説明演説を行った。枝野氏は2018年7月の通常国会会期末直前には、当時の安倍晋三首相に対し、2時間43分にわたって過去最長の趣旨説明を繰り広げたが、今回は約1時間半にとどめた。

演説では、菅政権のすべての政策や政治姿勢について厳しく批判し、ポイントごとに「新しい政権では」と述べて自らの政権構想を対案として明示した。ただ、議場内は盛り上がりに欠け、自民党席などには居眠りが目立った。また、NHKも含めテレビ各局も中継しなかった。

今回の枝野氏の対応については、主要野党からも「戦う姿勢が見られない。不信任案提出もまるで気の抜けたビールだ」(共産党幹部)との不満も相次ぐ。自民党も「いま選挙をしたら野党が有利なのに、なんであんなにおびえるのか」(参院幹部)と嘲笑する。

枝野氏は衆院選に勝利して政権交代する場合、「私が首相になる」と公言してきた。しかし、野党内では「このままでは、野党陣営で枝野氏の不信任案が可決しかねない」との厳しい声も広がる。

今後の展開はなおコロナ次第。菅首相と同様、コロナ・五輪政局は枝野氏にとっても命運が懸かる正念場となりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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