内閣不信任案、否決で浮き彫りになった「茶番劇」 解散におびえる野党、枝野氏の「不信任案」も

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ただ、こうした戦略は東京五輪の成功が前提となる。加えて、10月21日の衆院議員任期満了の前の9月30日には、菅首相の自民党総裁としての任期が切れる。このため、秋の政治決戦は、衆院選と総裁選に五輪の結果やワクチン接種の進捗度などが複雑に絡み合う波乱必至の展開となりそうだ。

野党の内閣不信任案の提出は2019年6月以来2年ぶり。立憲など主要野党は2020年以降、「コロナ禍で野党が政治空白を招いた」との国民的批判を恐れ、不信任案提出を見送ってきたのが実態だ。

立憲・枝野氏に弱腰との批判

菅内閣のコロナ対策が迷走する中、枝野氏は全国的なコロナ感染拡大を理由に「解散を誘発しかねない不信任案は出せない」と5月に発言した。それ以前に立憲幹部が不信任案提出に言及した際、自民党の二階俊博幹事長が「解散で立ち向かう」と応戦し、菅首相も「解散の大義になる」と明言したことを受けたものだ。

ただ、共産、国民民主などから「弱腰すぎる」との批判が噴出。立憲内部でも「自民になめられるだけ」(若手)との不満が出るなど、政権交代の際は首相候補ともなる枝野氏の「リーダーとしての器量」が問われる事態となっていた。

国会会期末における衆院での内閣不信任案や参院での首相問責決議案は、与党が圧倒的多数を占める状況では単なる政治的ポーズとみられ、与党が淡々と否決して終わるのが定例化していた。

しかし、2020年9月の菅政権発足以来、菅首相や二階幹事長はことあるごとに「不信任を出せば解散」とすごんできた。衆院の任期満了が迫る中、コロナ対応も考慮すると、「解散断行の選択肢は極めて限られる」(自民長老)ことから、国会運営も含めて野党を牽制する思惑からだ。

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