カマラ・ハリス氏が銀行相手にかつて闘った理由 不正に住宅を差し押さえられた住民を救済

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スタッフと私はフェアモントホテルを出て、タクシーで連邦司法省に向かった。途中でトム・ペレリに電話をかけて、そちらに行くと伝えた。ペレリは合衆国司法次官(当時)である。連邦政府の代表として全州捜査を監督するのが彼の仕事の1つだった。私はペレリに、差し押さえ危機で最大の打撃を受けた10都市のうち7つがカリフォルニア州にあり、問題の核心に迫るのが私の任務であって、独自の捜査を妨げるものには何であれ署名できない、と話した。

ペレリは、私が捜査したところで期待したような結果にはならないだろうと主張した。大手銀行の責任追及は、いくら全米最大とはいえ1つの州だけでできるようなことではないと。さらにこうも言った。その手の訴訟には何年もかかる。カリフォルニアが得られて当然のものを手にするころには、助けを必要としていた人々はすでに家を失っているだろう。徹底した捜査が行われなかったのもそれが理由だ。とにかく時間がないんだと。

午後遅くに、私は当時の財務長官顧問で、消費者金融保護局の設立に携わったエリザベス・ウォーレンに会った。同様の懸念をぶつけると、彼女は共感を示し、支持してくれた。政府当局者の立場上、信じる道を行きなさいと表立って言うわけにはいかなかったが、私がやり通せば彼女はきっと理解してくれると確信した。

銀行の提示額は十分なのか

その夜のうちにカリフォルニアに戻り、さっそく仕事に取りかかった。目下の状況を考慮すれば、和解によってカリフォルニアが受け取る金額は20億~40億ドルだといわれていた。州司法長官室の法務官からは、十分な額だ、和解に応じるべきだという声があがった。何と比較して十分と言うのかと、私はチームに問うた。もしも銀行の不正が20億~40億ドル以上の損害を招いていたとしたら、十分すぎると感じた額がはした金に見えてくるだろう。

さしあたっての問題は、その問いの答えがわからないことだった。問題を解決するのに必要なのは、法律家ではなく経済の専門家とデータサイエンティストだ。

その穴を埋めるべく、エキスパートを採用して複雑な計算を任せることにした。最も大きな被害を受けた人々を救済できるよう、水面下住宅ローンを抱える住宅所有者が各郡にどれだけの数いるのかを把握したいと考えた。さらに、目の前の問題を人という観点から知りたいとも思った。補償金で何人の人を救えるか? なんとか生活していけるだけの力が残っている人はどれくらいいるか? 差し押さえ危機に影響を受ける子どもの数は?

恐れていたとおり、結果は受け入れがたいものだった。惨状に比して、銀行の提示額は雀の涙で、彼らが招いた損害を補償するにはほど遠かった。

「和解には応じない方向で準備する必要があります」。私はチームに告げた。「こんな申し出は断じて受けるわけにはいきません」。独自の捜査を開始しなければならない。「いいですか、いまの私たちは、車もなしに誰かのパーティーに顔を出したゲストみたいなものです。帰りたいときに家に帰るには、自分の車が必要です」

就任前から、私はチームと協力し、州全体に及ぶ詐欺捜査の計画を立てていた。いまこそ実行に移すときだ。その年の5月、私たちは消費者詐欺、企業詐欺、犯罪捜査部門の最も優秀で頭の切れる法務官と捜査官からなる、〈カリフォルニア州司法長官住宅ローン詐欺ストライク・フォース〉の設立を発表した。

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