カマラ・ハリス氏が銀行相手にかつて闘った理由 不正に住宅を差し押さえられた住民を救済
捜査は重要部分であるロボット署名問題はもとより、さらに広い範囲を対象とした。追及したかったのは、全国の新規住宅ローンの62パーセントを保有する連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)だ。
また、JPモルガン・チェースがカリフォルニア州公務員退職年金基金に売ったモーゲージ担保証券についても捜査しようと考えた。そして、疑うことを知らないそうした団体を食い物にした悪党たちや、差し押さえ危機から救えるとうたって高い手数料を支払わせ、住宅所有者からなけなしのお金をだまし取った連中を追いつめてやりたかった。
カリフォルニア州が独自の捜査をしていると知って、ほかの州の交渉担当者たちは激怒した。銀行は私が問題を起こしていると言って憤慨した。和解の行方はわからなくなった。だがそれこそが私の狙いだった。これで各州の司法長官も銀行も、私の疑問をただ聞いているだけでなく、それに対する答えを用意しなければならないはずだ。
殺人事件ならば、遺体はすでに冷たい
夏のあいだ、私たちは2つのことに焦点を当てた。1つは捜査、もう1つは和解協議だ。そのためチームは昼も夜も働きづめだった。州内各地を訪れ、ワシントンにも何度も足を運んだ。依然として交渉は進展しない。銀行は要求に応じなかった。その一方で、カリフォルニアの差し押さえ率は著しく上昇していた。
8月、ニューヨーク州司法長官が全州交渉から手を引いた。その後、誰もが私の動向に注目している様子だった。カリフォルニアもあとに続くのか?
私にはまだそのつもりはなかった。その前に、銀行が要求を飲むという合理的な可能性をすべて検討し尽くしたかったからだ。交渉には重要な銀行側の融資条件変更が盛り込まれていたが、肝心なのはそれが確実に実行されることである。条件変更か補償金か、どちらか1つを選ぶのは間違っている。あくまでも両方でなければならない。
何より問題なのは時間だった。殺人事件ならば、遺体はすでに冷たい。罰も償いもことが起こったあとの話だ。対してこの状況では、被害はいまも広がっている。交渉が行われているあいだにも、さらに数十万人の住宅所有者が差し押さえ通知を受け取っていた。それは毎日、いまこの瞬間も起きていることだった。
住宅価値がローン残高を数十万ドルも下回る人たちは、広い範囲に、それこそ州内すべての地域にいた。私もチームも、毎週発表される指標を凝視した。1カ月、2カ月、3カ月後に何人の人が家を失うことになるかを示す絶望的な数字を見つめた。
交渉から抜ける前に、公正な取り決めと一定の現実的な救済策をかけて、私はカリフォルニアのために、最後にもう一度やってみることにした。
そのときまで、日々の交渉には、マイケル・トロンコソ(州司法長官室首席法律顧問)とカリフォルニア州司法省のベテランチームがあたっていた。次回の協議は9月だ。大手銀行の顧問弁護団が私に出席を求めていた。私を呼んで、テーブルの向こうから、ぽっと出の新顔の司法長官の品定めをする腹積もりに決まっている。望むところだ。お手並み拝見といこう。
(続く)
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