ライブドアの株主重視とは?
もちろん、ROEだけがすべてではない。利益の絶対額を増やすことも株主価値に合致するだろう。が、資本効率が低ければ、株主重視の経営とは言わない。
株主重視を掲げる堀江社長はそんなことは覚悟の上だろうが、株式市場を納得させるリターンを得られるか、ライブドアに課せられた責任は重い。
ニッポン放送株取得に約1030億円(1株6285.9円)かけたライブドアは、フジテレビに1株6300円、計1033億円で売却する。ライブドアとしてみれば、このディールはほぼトントン。だが、株主の視点から見るとどうか。
周知の通り、株式取得資金のうち800億円をMSCBで調達している。2月7日の終値454円から一時300円を割った株価下落が株主に犠牲を強いたという批判が多い。
一方で、MSCBによる調達なら株式に転換されてしまえば借金として残らない。事実、リーマンは全部を株に転換済み。これは財務の健全性を保つという意味から言うとライブドアにとって非常にありがたいスキームだった。だからこそ、高いリスクを取ってニッポン放送買収に挑むことができた。このMSCBは金利、発行手数料ともタダ。ライブドアのPLを痛めないという点でも会社には好都合だ。
だが、MSCBを引き受けたリーマンは貸株による空売りで120億円から140億円の利益を上げた。本来、ライブドアが金利や発行手数料として費用負担をしなければいけない分を株式市場=株主が負担したわけだ。これは結果的に800億円の株主にとっての調達コストは920億円から940億円かかったことを意味する。つまり、株主にとってニッポン放送株取得コストは1030億円ではなく、1150億円から1170億円。1033億円での株売却ではトントンどころか120億円から140億円の損と考えられる。
これとは別にフジを引き受け先とする第三者割り当て増資でライブドアは440億円を受け取る。このキャッシュインはライブドアにとって悪くない話だが、これは利益でもなんでもない。440億円でどれだけのリターンが得られるかによるが、持ち分の希薄化という意味では株主にとってマイナスである。