創設立役者なのに「台湾」がWHO参加できない事情 総会オブザーバー参加でさえ認められない状況
しかし、2016年の台湾総統選挙で蔡英文率いる民進党が勝利し、再び政権が交代すると、その翌年の2017年から台湾はWHO総会のオブザーバー資格を剥奪され、現在までその状態が続いている。
これまで日本は、「保健」という分野を通じて、国際社会とのつながりを維持しようと努めてきた。戦後の日本は、国際社会に一早く復帰するためにWHOという場を活用したし、戦前の日本でも、国際協調派は、近衛内閣が1938年に国際連盟の全技術的委員会との関係を断つまで、戦前に存在した保健分野の国際機関である国際連盟保健機関(LNHO)の議席を通じて国際社会とのつながりの維持に努めたという。
また、台湾も1971年に国連システムを追われてから40年近くを経て、2009年にWHO総会へのオブザーバー参加を通じて初めて国連システムに復帰することが叶った。
このように、保健を司るWHOは、国際社会へのゲートウェイとして機能するのである。
日本ができることは何か
日本にとっての国際社会へのゲートウェイを築き上げた立役者である台湾がその立場を追われたことは、国際政治の現実である。しかし日本は、WHO総会へのオブザーバー参加を含むWHOのさまざまな活動に対する台湾の意義ある参加を引き続き訴え、感染症危機管理の地理的空白をなくしていく活動が求められる。
地理的空白を無くすための活動は、WHO総会へのオブザーバー参加だけに限らない。本年6月4日に日本政府が台湾にコロナワクチンを送って支援したことも、その一環と考えることができるだろう。
台湾の友人が再びWHOの扉をくぐる日がいつになるかはわからない。しかし、その日が来たときには、ほかのアジアの友人とも手を携えて、感染症危機に対して安全な地域を共に作り上げるべく、羊羹を片手に語り合いたいものである。
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