第2番目は「教育力」である。ベトナムの識字率は2009年時点で94%以上。発展途上国の中では高い水準だ。しかもベトナムの現在の平均年齢は約27歳程度と若い。中国の平均年齢は約35歳で日本は約45歳だ。また、ベトナムの出生率は2010年の国際統計で1.82人であるから、成長はこれからが本番である。
第3番目の特徴は「交渉上手」である。日本人はベトナム人と交渉すると大変ねちっこくて「焦らし戦法」にやられる。ベトナム人の文化というか、持って生まれた彼らの性格だが時間をあまり気にせず相手が根負けするまで交渉してくる。日本人はすぐに手の内を明かしてしまうが、ベトナム人は手の内はそう簡単には見せない。日本人とベトナム人では思考論理が異なり、特に「時は金なり」という認識が欠如しているように思うことすらある。
カカア天下のベトナム
さらに、第4番目が「カカア天下」である。これまで取引をした民間の企業では、経営者の一角に必ず奥さんの存在があった。契約や交渉ごとの意思決定権は、奥さんが握っているケースが少なくないのだ。初めは理解できなかったが、ベトナムの男はあまり働かない人もいて、人は悪くはないものの、影でコソコソ遊んでいる連中も多い。
例えば、私が共同開発を依頼されたあるレアアースの会社のケースでいうと、その社長との関係は良好だった。だが、信用状の到着が一日遅れただけで契約をキャンセルされたことがあった。信用状の開設は余裕を持って行ったはずだったが、たった一日だけ信用状の原本の到着が遅れたのだという。
「余裕をもって送ったはずだ、おかしいではないか?」と電話で理由を問い詰めたら、結局のところ、社長は「申し訳ないが、妻が高く買ってくれる別の客に売ってしまった。勘弁して欲しい」と言ってきた。それほど信頼関係が持てないなら、これ以上取引関係は無理だと判断し、それ以来取引はお断りした。その後の噂では、他社とも同様のトラブルを起こしていると聞いた。
「南沙諸島と西南沙諸島を巡るベトナムと中国の戦い」は再び激しくなることも予想される。両国はある意味で、似ている部分があるからこそ、近親憎悪の関係に陥りやすいのかもしれない。われわれ日本人の視点から言うと、その「似て非なる」部分が見えてくれば、ベトナムとの取り組みから、逆に中国が透けて見えることもある。つまり、中国の悪いところもあるが、ベトナムとの取引を通じて、逆に中国の良さが見えてくる場合も少なくないのだ。
折しも7月末には、岸田外相がベトナムやインドネシアを歴訪するという。東アジアにおける日本の役割とは何かを、いまいちど考えてみたい。
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