「テスラ」が赤字から脱出できた超意外なカラクリ

2021年1月末の時価総額はなんと82兆円

発売当初は1台9万8000ドル(約1060万円。1ドル=108円で換算)という高価格にもかかわらず生産体制を超える受注を獲得したが、システムの不具合や生産の遅れに見舞われた。

テスラ初のEV「ロードスター」(写真:Heritage Images/Getty)

その後も新しいモデルを発表し、生産開始をするたびにラインを止めざるを得ないという状況に何度も陥る。テスラは自動車のものづくりの難しさに苦しみ続けた。

テスラの挑戦は「かなり危うい」ものだった

EVは従来の自動車よりも生産が簡単で、新規参入企業でもつくれる、という見方をする経済ジャーナリストがいるが、現実はそうではない。

自動車は部品の製造、組み立ての際に微妙な調整が必要な「すり合わせ型」の商品である。たとえ電動化が進んだとしても乗り心地を左右するサスペンションや車体剛性などの向上を目指すなら、既存メーカーに蓄積されたものづくりのノウハウ、経験知がなくてはならない。品質の高い日本メーカーのクルマでも欧州の高級車の乗り心地とは何かが違う。

その違いをなかなか埋められないのは、自動車を組み立てる経験知の差である。時速100キロ以上で地上を走る鉄の塊が自動車である。自動車に求められる信頼性、安全性はパソコンなどのIT機器よりも格段に高い。パソコンやスマホなどのように主要部品を組み立てればほぼ同等の性能が実現できる「モジュラー型」の商品とは異なるのだ。

そんなものづくりの現実を、自動車メーカーになるための洗礼としてテスラは受けたのだ。テスラは今では既存の自動車メーカーを苦しめ、時価総額では凌駕する存在になったが、設立後からの10年ほどは、実に挑戦的で危うい期間だった。

自動車関連技術に詳しいモータージャーナリストの清水和夫氏は「当時のテスラ人気は発売するクルマがEVだったからではない。クルマとしてセクシーで魅力的だったからです」と指摘する。

テスラ最初のEVであるロードスターは、英国のスポーツカーメーカー「ロータス・カーズ」にボディ、サスペンションなどをつくってもらい、電池だけをテスラが調達し、つくり上げたスポーツカーだった。「EVが受けたというよりも、かっこいいスポーツカーが人気を呼び、それがEVだった」というのが清水氏の見方である。

テスラの躍進には実はトヨタ自動車など日本メーカーが一役買っている。トヨタは米国での生産に初めて乗り出すときに、米ビッグスリーのGMと合弁会社「NUMMI」(カリフォルニア州フリーモント)を1984年に設立し、生産を開始した。トヨタ、シボレー、ポンティアックなどトヨタとGMのブランド車を生産した。

ところが2009年6月、GMが経営破綻し、合弁事業が解消された。工場は2010年4月に閉鎖に追い込まれた。

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