捕食者がいなくなると、生態系は地獄絵に 『捕食者なき世界』と『ねずみに支配された島』

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保護の結果、ラッコは次第に増えつつあった。しかし、最近になって、顕著な減少傾向が認められている。その原因は、ラッコなどに見向きもしなかったシャチが、エサとしてラッコを食べるようになってきたからだという。なぜか?その衝撃の理由はこの本をお読みいただきたい。

ラッコやヒトデといった海の生き物だけでなく、ジャガーやピューマといった陸上の捕食者も、人間によって『駆除』されると同様の結末をひきおこす。それらの動物に食べられていた鹿などの草食動物が異常に増殖し、草木が食べつくされ、連鎖的に生物の多様性・生態系がくずれていくのだ。

ほんまかいな、という気がしないでもない。しかし、オオカミでの実例を聞くと納得せざるをえない。イエローストーン、有名な国立公園での話だ。最強の捕食者であったオオカミがヒトによって絶滅させられ、やはりその生態系はぼろぼろになった。それを取り戻すために、他所からオオカミを再導入するという、壮大で勇気ある実験が挙行された。その結果、ほんとうに、昔の生態系がとりもどされていったのである。

捕食者によって食べられると、草食動物の個体数が減って、草木が繁るようになるのは当然だ。しかし、それだけではない。捕食という直接的な行為によってのみではなく、捕食者が近くにいるかもしれないという『恐怖』も生態系をコントロールしている、というおもしろい事実がわかってきた。

食べられる側の動物が、捕食者の存在を認知するようになると、その恐怖感から、狙われやすそうな場所には出てこなくなる。そうなると、そういった場所の植物相が回復する。同時に、草食動物が摂取できるエサの総量が減少するので、その地域で生きられる草食動物の個体数が減る。世の中は思っているより複雑だ。

ねずみに支配された島

一方で、地球上には、捕食者がいない天国のような場所がある。いや、より正確には、あった。そのような天国に捕食者がやってきたらどうなるだろう。『捕食者なき世界』の逆をいく世界を描いたのが、同じ著者による『ねずみに支配された島』である。

ニュージーランドには、鳥ならば飛んで行けるが、捕食者たるほ乳類は泳いでも届かない島々がある。そういった島々では、いささか奇妙な進化が生じ、飛べない鳥がたくさん住んでいた。しかし、これらの鳥たちにとっての平和な時代はいつまでも続かなかった。

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