「働かないオジサン」の境界線はどこにあるのか ケーススタディで考える若手社員の対処法

✎ 1〜 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

A君も働かないオジサンになってしまう?

A君に親近感を感じていても、「このままでは今度は自分が働かないオジサンになってしまうのは間違いない」といった厳しい意見もあった。読者も、オジサンを批判しているだけでは、A君の立場は変わらないと考えている。

一方で「私(読者)も、人は人! 自分は自分! と割り切るのが一番と思うのですが、なかなかそう思えず、不満ばかりが募る毎日です!」といった見解もあった。一筋縄ではいかない難しさを感じている人もいる。

A君は転職すべきだとコメントしている人もいたが、現状のままであれば、転職してもうまくいくとは思えない。なぜなら、転職した会社にも、BさんやCさんのようなオジサンがいる可能性は少なくないだろうからだ。A君が不満を抱かずに働くことができる会社に転職できる可能性は、大きくはないと思われる。

それではどうすればいいのだろうか? 前回の「働かないオジサンにならない4つ働き方(下)」で紹介した「枠組み脱出型」のように、会社の外に、イキイキできるものを求めるという方策もあるかもしれない。しかし30歳という年齢を考えれば、やはり足元の仕事を深めるほうが効果的であろう。

A君へのアドバイス

A君は、人の面と仕事面との両方からアプローチするのがいいだろう。

人の面では、取り組む方策はいろいろあろうが、「なぜ、自分は、Bさん、Cさんに対して腹が立つのか」を意識しながら、実際にBさん、Cさんと話してみるのが、ひとつの有効な手だ。

関心を持って接すると、意外と相手と打ち解けることができる。人は自分に対して興味を持ってくれる人に心を開くものだからである。

コミュニケーションを通して、Bさん、Cさんを批判している自分を客観視することができれば、A君の得るものは大きい。自分の上司とBさんとのやり取りを注視しておくのも必要だろう。

あとは自分の職場に、「こういう人になりたい」と思う先輩がいれば、近づいてその人の薫陶を受けることをお勧めする。特に、そういう人が複数いれば、自分自身の将来の道筋をより描きやすくなる。

また仕事面では、A君はマンネリに陥り、飽きているのかもしれない。そういう意味では何か新しいチャレンジを始めてみてもいいだろう。

顧客の要望やクレームをすべて記録して、その内容を整理・分析することから始めることもできる。7年間で積み上げてきたものをまとめて、住宅地の不動産営業の専門家になることを目指してもいいかもしれない。

いずれにしても、A君は自ら動きだす必要がある。ただし、A君は、ほかにいい会社はないかと転職紹介会社を巡ったり、自分の適性が生かせる仕事は何だろうとキョロキョロと周囲を気にするべきではない。

まずは与えられた仕事が要請しているものや、上司や同僚からから求められているものをきちんとやり遂げることだ。それが自分の能力を開花させる近道だからだ。

自分の足元の仕事を掘り下げながら、顧客や一緒に働く仲間の確固たる支持を得ることが、A君の不満を解決する道筋につながっていると思えるのである。

楠木 新 人事コンサルタント

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

くすのき あらた / Arata Kusunoki

1954年神戸市生まれ。1979年京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に経営企画、支社長等を経験。47歳のときにうつ状態になり休職と復職を繰り返したことを契機に、50歳から勤務と並行して「働く意味」をテーマに取材・執筆・講演に取り組む。2015年に定年退職した後も精力的に活動を続けている。2018年から4年間、神戸松蔭女子学院大学教授を務めた。現在、楠木ライフ&キャリア研究所代表。著書に、『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)、『定年後の居場所』(朝日新書)、『定年後』『定年準備』『転身力』(共に中公新書)など多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事