IMFはギリシャ経済の救世主となれるのか--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授



 多くの欧州の国でも、最終的に同じ結果に直面する可能性がある。ウクライナはすでに苦境の真っただ中にいる。ただ多くの場合、国家破綻のプロセスは歌舞伎の演技のように緩やかに進む。進んで融資してくれる豊かな貸し手が存在するかぎり、国家は破綻しない。今のところ債券市場も一時的に小康状態を取り戻している。

欧州でIMFが抱えるリスクは非常に大きい。バランスある行動を取るのは容易ではない。IMFが融資に際して厳しい“ドイツ型”の条件を付ければ、それは即座に対立を生み、債務不履行のリスクを高めるおそれがある。これはIMFにとって避けたいシナリオだ。今までのところ、IMFは東欧に対して非常に甘い態度を取り、将来の歳出削減や経済成長に関して楽観的な予想に基づく政策を認めてきた。

ただし、あまりにも長期にわたって“ミスター・ナイス・ガイ(好人物)”であり続けることには問題がある。融資枠の拡大があったとはいえ、IMFがいつまでも融資を続けることはできないからだ。そんなことをすれば、次に危機が発生したときに十分な資金がないという事態になりかねない。実際、日本・中国など、予想外の地域で、新たな危機が発生する可能性は十分にある。

さらに、財政改革の触媒役としてのIMFへの信頼が失われてしまえば、IMFの寛大な金融支援は、欧米や日本などで起こっている巨額の財政赤字危機をさらに悪化させることになるだけだ。低成長、高齢化、財政赤字拡大の三つは、危険な組み合わせである。

欧州でIMFが直面している問題は、IMFが実行可能な“入り口戦略”を持っているかどうかではない。IMFの計画はすでに実施に移されている。真の問題は、IMFが実現可能な“出口戦略”を持っているかどうかなのである。

Kenneth Rogoff
1953年生まれ。80年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。99年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001~03年までIMFの経済担当顧問兼調査局長を務めた。チェスの天才としても名を馳せる。

(週刊東洋経済2010年5月22日号)

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