「節約疲れ」な消費者の財布を、どうしたらつかめるのか?《それゆけ!カナモリさん》
米国ブランドの「コーチ」が、1990年代半ばに日本市場での巻き返しを行った例が有名だ。「手の届く高級品」というコンセプトに従って製品仕様を改訂。従来の価格帯から30~40%ダウンさせて、消費者を取り込んだのである。
「節約疲れ」「pent-up demand」を取り込むには、コーチの例とは逆に、今度は少し高めの価格設定で、商品の質をちょっとアップさせるのがポイントだ。その例として、モスバーガーの展開を見てみよう。
『“ひとときの贅沢”需要にお応えして「ぜいたくモスバーガー」「ぜいたくモスチーズバーガー」580円と640円で期間限定発売!!』(同社ニュースリリース)
同社はリリースでも、まだまだ厳しい日本の経済環境ですが、一方で“節約疲れ”ともいわれるようになり、我慢し続けるだけでなく本当にいいものは購買したい、というニーズも高まりつつありますと、「pent-up demand」の取り込みを明言している。外食産業でもいきなり高級レストランに需要が向かうことはない。「ちょっとした贅沢」というレベルでは一部でもブーム化している高級バーガー程度がちょうどいいところだ。
そして、ご注文いただいてから手作りするモスならではの、ハンバーガーひとつでちょっとした贅沢気分が味わえる「ぜいたくモスバーガー」をお届けしますとしている。これは、自社のバリュープロポジション(Value Proposition=競合に真似できない自社ならではの提供価値)を活かした非常にうまい手だといえる。
マクドナルドも内装を豪華にした新型店舗で100円メニューを廃止して、メニューも最大50円アップするなどの客単価アップに向けて舵を切っているが、チャレンジャーのモスバーガーは、ハンバーガー類の定番商品を軸として商品ボリュームごとに、「ボリュームゾーン(上位価格帯)」、「レギュラーゾーン(中位価格帯)」、「ライトゾーン(下位価格帯)」の3つの価格帯で幅広く商品群を設けるという戦略をとっており、「既存の最高価格品と比べても80円~140円高い」とより大胆な展開をしている。