貯金が大好きな日本人がわかってない投資の本質 ギャンブルでなく明るい未来を創るためでもある

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では、日本人はどうして現金を手元に貯めるのが好きなのでしょうか?

僕の仮説ですが、おそらく日本人はシンプルにお金が“大好き”なのだと思います。

お金そのもの、モノとしての紙幣や貨幣が大好きだから、できるだけ使いたくないのです。

お金を扱う仕事をしている僕は、超がつくほどのお金持ちに会う機会もよくあります。本当にいます、「モノとしてのお金が好きで好きでしょうがない」という人たちが。

使い切れないほどのお金を持っているのに、使わない。それはお金が大好きで、手放すのが嫌だから。

これから新しい事業にチャレンジしたいと意気込む起業家に向けて、僕はよく言います。

ライバルは他社ではなくてお金

「みなさんのライバルは他の会社ではありませんよ。お金そのものです。お金の魅力に勝てる商品やサービスをつくらないと、お客さんは買ってくれませんよ」と。

新しいかばんを買おうかどうか、迷っている消費者の選択肢は「ルイ・ヴィトンか、エルメスか」とは限らない。むしろ多くの場合は「ルイ・ヴィトンか、お金を手元に残すか」なのです。

「大好きなお金をたくさん持っていれば、幸せになれるはず。だからお金はできるだけ手放したくない」――そんな価値観が「貯める」という行動を駆り立てています。

でも、みんながみんな、お金を手元に残すことを優先していったら、世の中はどうなるでしょうか。

経済のサイクルを回すきっかけとなるのは「消費」でしたね。だから、消費が行われないと、お金がめぐらず、経済の動きは鈍くなってしまう。つまり、世の中全体の幸せにはつながらないのです。

この30年に及ぶ不景気も、「お金は使わずに、手元に残しておきたい」と考える人たちの選択の結果だという見方もできるのです。

もちろん、お金との付き合い方は個人の自由ですから、「貯金が悪」と言いたいわけではありません。

ただ、選択肢はもっと広く持ったほうがいい。なんとなく「貯めよう」ではなく、他の選択肢も知った上で、自分の意思で選べるようにしておくべきなのです。

その「他の選択肢」の一つが「株式投資」です。新しい商品をつくりたい。アイデアや技術や人はそろっている。でも、まとまったお金がない。

こんな会社が、銀行から融資を受けずにお金を用意する手段があります。「うちの会社の権利を『株式』として買ってくれませんか。儲かったら、ちゃんとお返しをします」と言ってお金を集めるのです。

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