グーグルの本質が「たった1つの公式」に表れる訳 なぜ今こそ「量子力学」を学んだほうがいいのか

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さて、ここまでお話しして、皆さんにお伝えしたいのは、「量子力学の基礎を、今こそ学習しよう」というお誘いです。

「いえいえ、私は文系なので、この記事をここまで読んだだけでももう限界です」

そんなふうにおっしゃる方もいるかもしれませんね。

日本の教育は不思議なもので、高校の早いうちから「文系」「理系」と分けてしまいます。さらに不可思議なことに、文系の中には一定数「理数科目は無理!」という、アレルギーにも似た反応をされる方がいるのです。

これからの基礎教養としての量子力学

しかし、文系だから…と量子力学にチャレンジするのを諦めるのは、次の2つの点から見直したほうがよい、ということを申し上げておきます。

まず1つめは、これから先、変化し続ける世の中で自分の能力を発揮し、最前線で活躍していくためには、量子力学はほぼ100%、避けて通れないということです。

前述のように、世界のトップ企業たるグーグルも、今から20年近く前から量子力学的な思考がその根本にありました。量子コンピュータの実装が現実味を帯びていく中、どんなビジネスに携わるにしても、量子コンピュータを扱うことが求められるはずです。

量子力学とそれがもたらす「まさか」を知らないままに量子コンピュータを扱おうというのは、日常感覚を持たないままでパソコンを使うのと同じ……というのは言い過ぎかもしれませんが、今の現実社会があってパソコンがあるのと同様に、「まさか」の世界への理解があってこその量子コンピュータなのです。

『クオンタム思考 テクノロジーとビジネスの未来に先回りする新しい思考法』(日経BP)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

これから先、さまざまな分野で起こるであろう技術革新も、その多くは量子力学や量子コンピュータに立脚することが想定されます。それなのに、ツールとしての量子コンピュータを、登場前から遠ざける必要はないといえるでしょう。

そして2つめは、理科系の学問を修めてこられた方々にとっても、「量子力学」と、その発展を続ける「量子物理学」の指し示す世界観は、決して易々と受け入れられるようなものではないことです。つまり、文系であろうと理系であろうと、ほとんど、スタートラインは同じです(一部の研究者を除きます)。

ただ、理系を自称する方々は、数学の式として示されると、納得せざるをえないというか、「石にかじりついてでも、式の展開だけでもナゾルぞ」となるわけで、この意気込みの有無だけが、もしかすると文系と理系とを隔てるものなのかもしれません。「日常感覚を超えた世界観に納得する」という点においては、文系も理系もほとんど変わらないはずです。

クオンタムの前には文系理系は実は関係なく、誰もがその枠組みを超えていく必要があるのです。

村上 憲郎 元グーグル米国本社副社長・日本法人社長、村上憲郎事務所 代表取締役

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むらかみ・のりお / Norio Murakami

1947年、大分県佐伯市生まれ。大分県立佐伯鶴城高校卒業後、京都大学工学部に進学。1970年京大卒業後、日立電子株式会社のミニコンピュータのシステムエンジニアとしてキャリアをスタート。1978年日立電子のミニコンからの撤退に伴いDigital Equipment Corporation(DEC)Japanに転籍。その後、複数の米国系ICT企業の日本法人代表を務めた後、2003年4月、Google米国本社副社長兼Google Japan代表取締役社長としてGoogleに入社。日本におけるGoogleの全業務の責任者を務め、2009年1月名誉会長に就任、2011年1月1日付けで退任し、村上憲郎事務所を開設した。現在、(株)ブイキューブの社外取締役なども務めている。

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