賃貸住宅の稼働率を調べる手段として、不動産証券化協会が発表する不動産投資インデックス「AJPI」がある。AJPIによると、コロナの前の2020年1月、東京23区の賃貸住宅の稼働率は97.5%だったのに対し、2021年1月は95.5%と2%下げた。そのロジックはこうだ。
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①人口密度に比例して、コロナ感染者が増大
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②都市部、特に東京への流入が減少し、流出が増加
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③都区部の賃貸住宅稼働率が悪化
3回目の緊急事態宣言が出ている最中にこの原稿を書いているが、ワクチンの接種が終わるまで、上記の人口動態と稼働率の悪化は続く可能性が高い。
目下、間取りごとの稼働率は大きく変化している。これまで賃貸住宅の商品企画はワンルームが主流だった。その理由は簡単で、最も面積単価が高かったからである。開発の効率は投資額に対する賃料収入で決まるので、面積単価が高い間取りを作るのは当然だった。しかし、そのワンルームがコロナ流行後にかなりダブつくようになっている。
代わりにニーズが強くなっているのが、1DK(DKとは、ダイニング・キッチン)だ。しかし、ワンルームとの面積差は2㎡ほどで大差はない。ほぼ同じ面積で、DKとベッドルームが分離されているだけだ。
稼働式の間仕切りをつけただけと言えばそれまでだが、リモートワークでは働く空間とプライベートな空間を分けたいニーズがある。ONとOFFの区分であり、その間仕切りの意味は心理的に大きい。面積はほとんど変わらないので、家賃が大きく変わることもない。こうした1DKは空室がすぐ決まる様になり、家賃が高くなりつつある。
立地ニーズも変化
もう1つ、「小さくても部屋数を増やしたい」、「面積を大きくしたい」といったニーズは立地ニーズも変化させている。これまでの駅近から「駅からやや遠くても面積が広い方がいい、スーパーが近い方がいい」といった判断をする人が増えている。
また、家にいる時間が長い分、家の設備・仕様に対するニーズもこだわりが増している。例えば、以下のようなプランに人気がある。
・お風呂にミストサウナや浴室TVを付けた「お風呂時間充実」を実現するプラン
・楽器演奏しても大丈夫な遮音性が高いプラン
・ルーフバルコニーや庭で安全にアウトドアできるプラン
賃貸住宅はもはや仮住まいではなく、リア充の最たる出費になっているのである。
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