新型コロナ危機で露呈、日本の「国力」と「弱点」 多面的な視点で日本の危機管理能力を検証する

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国際保健外交(D)は、諸外国や国際機関といった国外のアクターとの協力関係を構築するために必須である。感染症危機は、一国の国内危機として収まるわけではなく、世界的に拡散し、国内と国際社会の危機が同期するのが特徴だ。したがって、平時から世界各地の感染症の発生を監視しつつ、日本に脅威が及ばないように同盟国・友好国と連携して外交活動を行う必要がある。

また、危機が発生した場合には、国内の感染症危機管理オペレーションを円滑に遂行するために、諸外国における危機管理オペレーションや国際機関との利害調整が必須だ。

新型コロナ危機では、感染症危機管理オペレーションに関するWHOや諸外国との情報共有、周辺諸国との渡航制限に関する調整、有力なワクチン企業を有する国との国際交渉、新型コロナワクチン国際共同購入枠組み(COVAXファシリティ)への参加といった外交活動があるだろう。これらは主に、厚労省と外務省が担っている。

感染症インテリジェンスとは

感染症インテリジェンス(I)とは、感染症危機に関するインテリジェンス機能を行使する営みのことを言う。感染症に関する早期警戒システムを通じ、世界に存在する既存の感染症、および将来発現しうる感染症に関する兆候について、平時と危機時に渡って24時間監視(モニタリング)する。

何らかの病原体が発現し、日本に危機を発生する可能性も含めて兆候をタイムリーに検知し、政府全体に警告を発することで、感染症危機管理オペレーションを起動するきっかけとなる。

具体的には、疫学データ収集・分析によるリスクアセスメントや、数理モデリングによる予測などを行う。危機の最中においては、他国の感染症危機管理オペレーション情報を収集・分析することも必要だ。日本では、国立感染症研究所が中心的な役割を担っている。

感染症危機管理オペレーション(M)とは、国内の感染症危機を抑え込むために行われる政府主導の事態対処行動のことである。医療機関での患者の治療やワクチンといった医療的措置、手洗いやマスク、ソーシャルディスタンシング、ロックダウンといった公衆衛生措置、検疫や入国制限といった渡航措置といった3つの対抗手段を総合的に実行することだ。

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