アメリカ人の過半数「五輪は見ない」と答える理由 「開催国を知っている回答者」わずか半分以下

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2016年リオデジャネイロ五輪で銅メダルを獲得した男子テニスの錦織圭も、パンデミック(世界的大流行)に対する日本の対応に疑問を投げかけ、大会開催への不安を口にした。

女子テニスで歴代最高の選手であり、今も世界で最も有名なセリーナ・ウィリアムズも、リスクの上昇を理由に五輪参加を明言していない。

それでも人間心理を考えれば、東京五輪は予定どおり開催される公算が大きい。理由は、程度の差はあれ誰もが陥る「サンクコスト(埋没費用)の誤謬」だ。人は何かのために資源や労力を投じると、途中で止めることをひどく嫌う。たとえそれが正しい判断であったとしても、だ。

錦織やウイリアムズのように五輪開催への疑問を口にするアスリートは圧倒的少数派だ。開催を確信できない大坂の昨年の年収は約40億円。五輪の金メダル獲得は本人の夢だったとしても、4大大会優勝に比べれば小さな成功であり、年収にはほとんど影響しない。

五輪不参加は、大坂にとっては取るに足りないことなのだ。しかし、五輪に参加するほとんどのスポーツには、億万長者のチャンピオンはいない。選手の大半は、キャリアの頂点が五輪であるアマチュアだ。

開催中止はWHOにとっても「敗北」

五輪の女子体操で史上最も成功したアスリートの1人シモーネ・バイルズ(アメリカ)でさえ、大会参加に強い意欲を示し、求められることは何でもすると言っている。ほかのアスリートたちも同様だろう。五輪に出なければ、キャリアとレガシーが台無しになる。

大会が中止になれば、日本の権力者たちのレガシーも失われることになるだろう。2013年の招致活動時、日本は開催費用を73億ドルとしていたが、現在の公式発表では約160億ドル前後。関係者の間では300億ドル近い費用がかかると言われている。過去の夏季五輪の2倍以上の金額だ。

WHO(世界保健機関)が新型コロナをパンデミックに認定したのは2020年3月。その16カ月後になって五輪を中止するのは、感染拡大を防げなかったことを認めるのと同じだ。

しかも、この大会のために10年がかりで取り組んできた努力が水の泡になる。人間心理の面から見て、受け入れがたい選択だろう。

サム・ポトリッキオ(Sam Potolicchio) 
ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、『プリンストン・レビュー』誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人。
「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

世界のニュースを独自の切り口で伝える週刊誌『ニューズウィーク日本版』は毎週火曜日発売、そのオフィシャルサイトである「ニューズウィーク日本版サイト」は毎日、国際ニュースとビジネス・カルチャー情報を発信している。CCCメディアハウスが運営。

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