「黙食・黙乗」の1人旅はこれからの旅のスタイルだ 感染リスク低く、会話はなくても自由がある

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善通寺付近のうどん屋に入ったあと、11時51分発の土讃線、阿波池田行きに乗車した。秘境駅と呼ばれる坪尻駅で3分停車。この時間で駅を見学する人も多い。

秘境駅として知られる坪尻駅(筆者撮影)

一筆書き切符の経路上は佃駅で徳島線に乗り換えだが、区間外運賃を払って終点まで乗った。阿波池田発徳島行きの列車は、すでに地元の高校生でいっぱいだった。隅の方に空いている席を見つけて座った。ローカル線はあくまで地元住民が主役だ。

吉野川の景色を居眠りしながら眺め、佐古で鳴門行きに乗り換えた。鳴門駅近く、ばあさんが一人で切り盛りしている定食屋に入ったあと、高速鳴門バス停近くにある宿まで20分ほど歩く。

撫養川沿いの風景(筆者撮影)

撫養川沿いから離れ、ヴォルティスロードと呼ばれる車通りの多い道に入ると、地方によくあるショッピングモールが広がっている。こんな何でもない町を歩くのが好きだ。地元の人々の日常にお邪魔させてもらうという孤独感からなのか、観光地ではなくとも、ふとした旅情を感じる。

宿で話を聞く。工事関係者をはじめビジネス利用は一定数あるが、渦潮の観光客が減り、企業の研修生受け入れもなくなってしまったという。

しばらく旅は困難な状況だが…

翌朝、高速鳴門から京都行きの高速バスに乗車した。真新しい「サンガスタジアム by KYOCERA」は亀岡にある。京都駅からは列車で20分ほど。途中東映太秦映画村を掠めるし(巨大なエヴァンゲリオン初号機が見えた)、保津峡の景色も楽しめる。

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あいにくの雨でもほとんどの座席が濡れない素晴らしいサッカー専用スタジアムだったが、肝心の試合はミス絡みの2失点で負けた。

帰りはJR東海ツアーズの「ぷらっとこだまグリーン車プラン」だ。京都―東京・品川がドリンク付きで1万2000円。普通車指定席でも通常1万3850円、時間はかかるが大変お得である。やってきた新幹線を見て驚いた。最新型のN700Sではないか。こだま号なのでまったく予想していなかった。しかもグリーン車である。試合に負けたことも忘れ、快適に帰京した。

けれども、これまで気にも留めなかったことに注意しながら旅をすると、その分、いやそれ以上に疲れるようにも思う。これまでの日常が戻ってくることを切に願う。

旅に出るのが困難な状況が続くが、今後コロナがある程度収束したとしても、当面はなるべく接触を避ける生活様式が求められるだろう。一人旅の楽しみを知る人が増えれば、感染リスクを抑えつつ、旅行・観光業を支援することにもつながるのではないだろうか。

八田 裕之 週末旅行家

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はった ひろゆき / Hiroyuki Hatta

1967年生まれ。武蔵工業大学(現:東京都市大学)工学部電子通信工学科卒。JR全線完乗した鉄道ファンにして、Jリーグをこよなく愛する。平日は会社員だが休日はJリーグ遠征で全国奔走の日々。フュージョンバンド「Quiet Village」のリーダーとしてギターと作曲を担当、オリジナルアルバム発表、鉄道コンピレーションアルバム参加など、音楽活動も行う。

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