乗車券は、東京都区内発鳴門行きのいわゆる一筆書き切符である。この時期のサンライズ瀬戸は通常の終点高松ではなく、琴平まで行くので以下の経路にした。
これで1万2140円となる。この区間であれば、指定席券売機で買うことができる。この買い方は別の機会で紹介したい。
4月2日、夜の東京駅コンコースは緊急事態宣言が解除されたとはいえ人が多かった。3月のダイヤ改正により出発時間が10分早まったサンライズ瀬戸・出雲は21時50分、定刻に出発した。寝台からホームに並ぶ通勤客を眺めるのはちょっとした優越感だ。
マスク生活で忘れていた季節感
なにより、夜行列車の旅情はなにものにも代えがたい。個室の電気を消して、夜の町を眺める。23時を過ぎると、深夜帯に入るため岡山まで放送を控える旨の放送が入り、車内がより静かになる。
山間の外灯に照らされた小径。窓の真下に黒い海、岸に寄せる波だけが白い。一瞬で通り過ぎる踏切の赤い点滅。寝台に伝わってくるレールの継ぎ目の音と揺れ。眠っている町が広がる中、ぽつんと灯りの点いている民家を見つけると、それぞれの人生を空想する。
列車は朝の瀬戸大橋を渡り、高松で30分ほど停車したあと、8時39分に終点の琴平に到着した。1駅戻って善通寺に向かった。弘法大師が誕生した寺には、ちらほら参拝の人がいる。雲ひとつない快晴の空、ときおり優しい風が頬を撫でていく。
広い境内、周りに人がいないことを確認、マスクを外して春の空気を吸う。常香炉の線香の匂いがかすかに混ざる。
マスク生活となり、このようなほのかな香りを感じられなくなったのが残念だ。夏、ひと雨来そうだな、という湿りを含んだ匂い。秋終盤の夕刻、屋外に出たとき唐突に感じる冬の匂い。日々に変化がなくなり、季節感も奪われてしまったように思う。
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