アメリカのドナルド・トランプ前大統領が愚かかどうか、ブレグジット(英国のEU離脱)が誤った決定かどうかなどはさておき、こうした考え方に対して疑問を持つ人々は、この5年で増大した。
一方、中国の習近平国家主席が優れたリーダーかどうか、目標が正しいかどうかの議論はさておき、実力者であることは間違いがない。民主的な選挙と言われるものでは実力者が出てこず、独裁制の下で生まれてきているという考え方もありうる。もちろん、共産党内の激しい競争がこれを実現しており、競争こそが重要だという考え方もありうる。
愚かな政治家が選ばれる「2つの理由」
世界的に見て、優秀な国家元首が民主的な選挙で選ばれる確率は低下しているように見える。ここでは独裁制との優劣比較は論点ではなく、なぜ民主的な選挙で愚かな政治家が選ばれるか、という問題であるから、その理由を考えよう。
形式的には2つ考えられるだろう。
1つは、愚かな人しか立候補しないので、愚かでない人を選べない、という可能性である。もう1つは、愚かな人が「より得票力がある」という説である。
前者は、政治家という仕事(職業? しかし、職業政治家と一時的に政治家になる人とがいるし、兼業も許されているから、仕事と言ったほうがいいだろう)が馬鹿馬鹿しくて、まともな人は立候補する気にならない、ということである。後者は、有権者がなぜか愚かな人に投票してしまう、という現象である。
なぜ政治家になるのは馬鹿馬鹿しいのか?これは仮説2「政治家になると愚かになってしまうから」の問題ともつながる。
政治家になると、もともと愚かでない人でも、愚かに行動するようになってしまう、というストーリーである。この現象が生じる可能性は、2つある。まず、漫画的にありそうなのは、政治家になると先生になり、傲慢になり、人の言うことを聞かなくなるから、ということである。経営者ならガバナンスが効かない状態であり、先生と呼ばれる職業には必ず起こることらしい。私も先生と呼ばれることに慣れてしまった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら