日本人が知らない「中小企業M&A」、加速する4理由 公表されていない「本当」の日本のM&A市場は?
「売り手側」と「買い手側」のそれぞれでM&Aが増える要因を見てきましたが、次に「マクロ的な視点」で見ていきます。
日本は業界内の企業数が多く、過当競争に陥っていて、欧米と比べて企業の利益率が低くなっているということは以前からいわれてきたことです。デービッド・アトキンソン氏は『日本人の勝算』などの著書の中で、豊富なデータや論拠を示して、「日本全体の生産性を上げる方法」のひとつとして、「企業の統合を促進し、企業規模を大きくすべきこと」を主張しています。
企業規模と生産性の相関関係は大きく、私もひとりの経営者として「企業規模が大きくなれば生産性が上がる」というのはよくわかります。
社員数が増えれば、さまざまなITシステムなどの投資をするメリットが出てきて、「業務効率化」や「顧客へのサービス改善」ができ、ひいては「利益率の向上」「社員の待遇改善」につながります。
日本は「人口減少」で需要が減っていますので、企業数を維持することは不可能です。『2020年版 中小企業白書・小規模企業白書』によると、実際に1999年から2016年の17年間で、485万社から359万社と、126万社も企業数が減少しています。
それでも、まだまだ日本は従業員数が少ない企業で働く人の割合が、アメリカ、ドイツ、イギリスなどと比べても多く、また日本の中小企業の生産性が低いことがOECDの調査によって明らかになっています。
したがって、後継者不在の事業承継の問題だけでなく、「日本が先進国として生き残るために生産性を上げていかなければいけない」という意味においても、M&Aによるさらなる企業の集約化や業界再編を進めていくことは避けられません。
日本の株式市場でも「株主重視の経営」が求められている
最後にもうひとつ「マクロ的な視点」で欧米と比較した場合に、今後日本でM&Aがまだまだ増えていく理由をお話しします。
欧米主要国のM&A取引総額の「対GDP比」は、国や時期にもよりますが、6〜10%強程度です。それが日本では3%程度です。
日本の株式市場においても、株式持ち合いが解消され、外国人株主やアクティビストなどのモノいう株主が増えるにつれて、「株主重視の経営」がますます求められています。
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